皆様こんにちは。
 前回、将来介護費一般についてみましたが、今回は、この将来の介護費につき、職業付添人が介護を行う期間について、日額2万4000円とかなり高額の介護費用を認容した東京地裁平成15年8月28日判決をみてみたいと思います。
 (前回の記事はこちら:将来介護費①

 事故時21歳の本件女性被害者は、自動車保険料率算定会(現・損害保険料率算出機構)により、後遺障害等級1級3号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの)、8級1号(1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの)に該当するとして、併合1級の認定を受けました(症状固定時23歳)。

 本件において、原告は、将来の介護費について、1か月間、介護事業会社に居宅介護を委託し、同社に対し介護費として135万2473円(1日当たり4万3628円)を支払ったことから、将来の介護費の算定に当たっては、この額が基準とされるべきであると主張しました。
 これに対して、被告らは本件訴訟において原告らの主張する将来の介護費の単価が不当に高すぎ、介護保険制度の施行後においても、従前の金額体系によって介護を行う業者は存在するなどと主張しました。

 本裁判例は、まず、本件被害者に対する職業付添人による介護費用は、1日当たり13時間の介護を要するという介護の実態から、最低でも1日につき2人の職業付添人が必要となり、現時点では、1日当たり4万円を下回ることはないものと認定しました。
 なお、本裁判例は、上記の認定に続いて「ところで、」としたうえで、これまでの裁判例においては、職業付添人による介護費としては、1日当たり1万円ないし1万2000円を認めるものが比較的多かったといえるが、介護保険の対象とならない者についての介護費も値上がりしている状態が現在も続いていることからすると、本件被害者の介護費が、前記のような裁判例で認められた程度の額で足りるということはできないと付言しています。

 他方で本裁判例は、介護保険制度自体が検討、見直しを予定されていることや、今後、介護方式が多様化され、常時監視を主とする介護サービスについては、安価な介護方式が提供されるであろうことが合理的に予測されることから、平均余命までの62年間にわたって現在の介護費の価格水準が維持される蓋然性は低いとして、原告が主張する損害額の約6割に相当する日額2万4000円を基礎として算定するのが相当と判断しました(介護費用約1億3200万円)。

 結論として本裁判例では、将来の介護費について、母67歳まで10年間は母の介護(日額8000円)と職業付添人の介護(1日当たり2時間分3692円)、その後の52年間は上記のように職業付添人2人の介護(日額2万4000円)が必要として、合計約1億3200万円が認められました。

弁護士 髙井健一