3 症状固定後の治療費について

 症状固定後の治療費は、一般的に否定的に解されますが、その支出が相当な時には認められることもあります。

 保存的治療の必要性を理由に症状固定後の治療費を損害と認めた事例や、症状固定後の治療費を支出する必要性のあることが慰謝料として斟酌された事例があります。

 例えば、頸椎捻挫の傷害を負った被害者のほぼ症状固定したとうかがわれる日以降の治療に要した費用について、改善は期待できないまでも保存的治療としては必要であったと推定されるとして事故との因果関係を認めた判例があります(神戸地判平成10年10月8日)。

 また、別の判例では、胸部、頭部、左上下肢挫傷、右腎部挫傷、頸椎症の傷害の被害者が、事故から約10か月後に症状固定診断を受けた後約5年間の治療について、「事故と相当因果関係の認められる治療費は、原則として症状固定時までの分に限られる」としながらも、後遺障害慰謝料として斟酌されています(東京地判平成14年1月29日)。