①被害者が死亡すれば、その時点以後の介護は不要となるのだから、もはや介護費用の賠償を命じるべき必要性はなく、その費用負担を加害者に求めるのは、むしろ公平に反する。
②公平性の裏付けが欠ける場合にまで、「損害は交通事故時に一定の内容のものとして発生しており、事故後の事情で変更されない」という一種のフィクションを維持するのは妥当ではない。
③被害者の死亡時点で賠償すべき金額が変わることがありうるとしても、だからといって減額すべきでないという結論には結びつかない。

4 最高裁の判断の背景

 逸失利益と将来の介護費用とで結論が分かれた理由の一つは、逸失利益が前回説明したように、消極的損害とされるのに対し、介護費用は現実に支出されるべき損害であって、積極的損害とされ、両者は性質が異なるという点にあります。
 また、逸失利益については、被害者が一家の収入の柱である場合、その被害者に扶養されている親族にとっては、被害者の労働能力が失われることで、扶養してもらう利益の一部を失うことを意味するという性質があります。他方で、介護費用についてはこのような問題は生じません。
 むしろ、遺族にとっては被害者が亡くなれば介護費用を支出する必要性はなくなるのですから、その分の支払いを受けられなくなっても特段不利益はないはずです。

5 まとめ

 こうして、逸失利益と将来の介護費用とで、最高裁の判断は分かれることとなりました。
 かように、交通事故と損害賠償をめぐる問題は一筋縄でいかない部分があります。まして事故に遭われて大変なときに、自分で相手方や保険会社と交渉をするのは容易なことではないと思われます。損害の算定でお困りの方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。