3.自賠責保険の認定が得られるか否かは一つのメルクマール
では、治療の必要性をどのように判断していけばいいのでしょうか。一つのメルクマールとして、自賠責保険の判断があります。自賠責保険は強制加入保険で、迅速に広く被害者の損害を賠償して被害者を保護する目的の保険ですから、任意保険会社が否定したとしても自賠責保険が認める場合もあります。また、加害者側保険会社が対応しない場合でも、被害者側の人身傷害特約を使える場合もあるので、人身傷害特約が対応できるのかで判断することも可能です。但し、加害者保険会社も人身傷害特約も最終的には自賠責へ求償することを予定しており、事前に自賠責が認めない場合にはどちらも対応はしないでしょう。
結局、自賠責が認めるか否かが重要になるのです。ただ、自賠責保険の判断が出るまでに1~2ヶ月を要することがあり、その間の治療については被害者自身で判断することになります。この判断が一番難しいです。
4.終わりに
一番のメルクマールは、治療が必要な症状なのだから、仮に加害者側が支払わなかったとしても通院したいと思えるかどうかです。費用が高額になれば治療を受けたいが受けることが出来ないということもあるでしょうから、治療は第三者行為による傷病届を提出し健康保険を利用して通院してください。また、毎日通院することも避けて下さい。どのような場合でも毎日通院する必要性があるかは疑問が残ります。そして、できる限り仕事も続けて下さい。軽微な事故の場合、休業損害が認められるとしてもその期間は短くなってしまうことが多いですし、収入が止まり生活に困窮しては、早期解決を焦るあまり示談する際に妥協せざるを得なくなってしまいます。仕事を休むことによって事実上職場で不利益を受けることも多いでしょう。業務を遂行できないとして解雇されることもあります(不当解雇にあたることもありますが)。
稀に軽微な事故にもかかわらず症状が重たく長期化することがあることも事実です。明らかに事故の程度にそぐわない症状が続くのであれば、専門医で各種検査、問診等の上、確定診断してもらう必要があります。CRPS(RSD・カウザルギー)、脳脊髄液減少症といった傷病は、専門でなければ適切に診断できません。整形外科医の中には、交通事故で疼痛、痺れ等の訴え⇒レントゲンで異常なし⇒頚椎捻挫、腰椎捻挫⇒治療3~6ヶ月程度と判断しているとしか思えない医師がいるのも事実ですし、専門知識に乏しいにもかかわらずRSDなどと安易に診断してしまい、訴訟で負けてしまうこともあります。
以上、厳しいことを申し上げた点もあるかもしれませんが、被害者の立場ではあるものの、治療費が自己負担にならないように注意して下さい。