2 昭和48年11月16日最高裁判決について

 本事案は、症状固定当時63歳であり、退職後は、ピアノ、声楽、バイオリン等の音楽や書道の家庭教師として毎月5万円以上の収入を得ていた被害者が、右足に10級以上に相当する後遺障害が残ったため、上記家庭教師を辞めてしまった事案です。

 被害者は、右足の右大腿部の筋委縮が原因で、歩行や乗物の乗降に補助具や介助が必須となり、正座等で畳の上に座ることができなくなりました。そのため、生徒の家庭に出向くことやピアノ演奏時におけるペダルの微妙な操作ができなくなったことから、そのような被害者にピアノを習うことを希望する生徒が少ないと推認される一方、被害者の後遺障害は声楽やバイオリンの指導に対する阻害は少ないこと、椅子に座る方式での書道の指導が可能であることを考慮した上で、被害者が家庭教師を継続していたとしてもその収入は事故前の1割程度にとどまるとして、労働能力喪失率を90パーセントと認定しました。

 このように労働能力喪失率表とは異なる労働能力喪失率が認められる可能性があるため、労働能力喪失率に疑問等がある場合には、ぜひ一度ご相談ください。