1.はじめに

 交通事故により、後遺障害が残ってしまった場合や、死亡してしまった場合、将来得べかりし利益である逸失利益を請求できる場合があります。

 逸失利益の本質は、交通事故がなかったら被害者が得られたであろう収入と事故後に現実に得られる収入との差額とするのが判例の考え方です。これを差額説といいます。

 したがって、交通事故の前後で具体的な減収が発生しなければ逸失利益は認められないというのが原則的な考え方となります。

2.幼年者の場合

 では、交通事故の被害者が幼児や小学生のように、まだ仕事についていない場合はどのように考えるべきでしょうか。

 差額説の考え方を徹底すれば、幼児や小学生は、交通事故の前も後も収入を得ていない以上、交通事故の前後で具体的な減収は発生しておらず、逸失利益は認められないということになりそうです。

 しかし、幼児や小学生も、交通事故にあわずに成長していれば、何らかの仕事に就いて収入を得るはずであり、逸失利益が認められないという結論に疑問が残ります。

 この点について、裁判所は、概ね、年少者死亡の場合における逸失利益は、被害者側が提出するあらゆる証拠資料に基づき、経験則とその良識を十分に活用して、できうるかぎり蓋然性のある額を算出するよう努め、その蓋然性に疑いがもたれるときは、被害者側にとつて控え目な算定方法を採用することにより算定をするべきである、という考え方を明らかにしています(最大判昭和39.6.24判時376.10)。

3.具体的な算定方法

 上記の判例以降、実務上、幼年者の交通事故においては厚生労働省の賃金構造基本統計調査により算出される賃金センサスのうち、産業計・企業規模計・学歴系・男女別全年齢平均の賃金額を基礎として算定する扱いが一般となっています(女子幼年者については、産業計・企業規模計・学歴系・男女別全年齢平均男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定されることが一般的です)。

 ただし、具体的事情によっては、基礎収入をより高く考える場合もあります。ぜひ、弁護士に一度ご相談いただければと思います。