1 はじめに

 皆様、こんにちは。
 最近、大型トラックと軽自動車の衝突事故で、交差点の信号の表示が問題にされた裁判例があったと思います。ニュースでも取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思います。

 今回は、上記の裁判例で交差点の信号の表示が問題にされたことにちなみ、信号の表示について取り上げたいと思います。

2 道路交通法上の規制

 道路交通法上では、道路を走行する歩行者または車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るために特に必要があると認めるときに、警察官等が信号機の表示する信号と異なる手信号等をすることがあるようです。)に従わなければならないとされています(道路交通法7条)。

 信号機の表示する信号等に従わないこと、つまり、信号無視の違反をしてはならないとされています。そして、信号無視の違反とは、基本的には、交差点に進入するとき対面する信号につき、運転者のとった行為が表示された信号の内容的な意味に反することとされているようです。

3 信号の表示に関する裁判例

 例えば、青信号により発進した車が、赤信号を無視して突入してきた車と衝突した疑いが濃厚である事案において、青信号の出ている交差点に進入する自動車の運転者としては、特段の事情のない限り、赤信号の出ている方向からこれを無視して突入してくる車両のありうることまで予想して左右を注視する注意義務はないと判示しています(最判昭43・12・24)。

 他方で、深夜、酒に酔った歩行者が横断歩道の信号の表示を無視して交差点内に進入したところ、青色信号に従って侵入した車と衝突した事案において、普通乗用車を運転し、青色信号に従い交差点を直進しようとした際、信号に違反して交差点内を横断歩行するものが全くないとも言い難いとして、車の運転手に過失を認めた裁判例もあります(東京高判昭和59・3・13)。

 このように、裁判例においても、基本的に対面信号の表示に従う運転者は保護されていますが、具体的な道路状況や事故状況においては、信号に従って運転することを保護しつつも、周囲の道路状況を注視して運転すべき場合があるとされるようです。

4 最後に

 上記裁判例でも取り上げられたように、車を運転している際に、信号の表示の信頼は基本的に保護されるべきではありますが、絶対的な保護まで与えられているわけではないことに注意すべきです。

 例えば、車が交差点進入にする時の対面信号が青であり、その交差点に設置された横断歩道の信号が赤と表示されている場合に、歩行者が赤信号で横断開始したときには、基本的に歩行者の過失が大きいとされますが、その基本的な過失割合は、70(歩行者):30(車の運転手)とされ、車の運転手にも一定の過失割合がついてしまうこともあります。

 信号の表示に従った運転はもちろんですが、周囲の道路状況・交通状況に応じて安全な運転を心がけていただければと思います。