低酸素脳症
=循環不全又は呼吸不全などにより、十分な酸素供給ができなくなり脳に障害をきたした病態。
組織への血流量の低下(=虚血)と、血液の酸素運搬能の低下(=低酸素血症)が混在
呼吸機能は、麻酔や手術の侵襲により影響を受ける。

周術期の呼吸管理について

「酸素化」=肺胞から血液に酸素が移動する現象
「喚起」=血液から肺胞に二酸化炭素が移動する現象

術後の呼吸器の合併症

無気肺、感染症、気管支攣縮、肺塞栓症、慢性呼吸器疾患の増悪、呼吸不全、睡眠時無呼吸症、ARDSなど。

術後の呼吸器合併症のリスク要因

術中の危険因子として、全身麻酔、手術部位、筋弛緩剤の使用など。

周術期の低酸素血症の原因は主にシャント
←全身麻酔中の意識消失ならびに筋弛緩薬の使用に伴って、機能的残気量が減少し、無気肺を生じるため。

ガス交換が正常に行われるためには、呼気終末の肺気量(=機能的残気量)が重要。
機能的残気量は体位や肥満の有無などにより変化するが、特に全身麻酔中には減少。
機能的残気量が小さいほどシャント増加→低酸素血症に。

麻酔導入時の無気肺は、比較的容易に再膨張させること可能。
方法:麻酔導入直後に40cmH₂O程度で加圧する。

裁判例上認定された医学的知見

大阪地判平成19年3月9日

*術後管理と低酸素血症について

 脳は、低酸素に対して最も感受性が高い臓器であり、低酸素下での脳組織の生存期間は三分未満とされているところ、低酸素血症は、典型的な術後合併症の一つとされており、手術直後において動脈血酸素飽和度九〇%未満の低酸素血症が起こる頻度は三五~六〇%、同八五%の重度低酸素血症が起こる頻度は一二~二二%という報告があるともされている。また、高齢者、開腹手術、全身麻酔後等において、低酸素血症が起こりやすいとされている。

 このようなことから、術後管理においては、低酸素血症につながる呼吸抑制や低換気の発見、診断が重要であるとされている。また、呼吸抑制ないし低換気の原因としては、麻酔薬・鎮静薬・鎮痛薬による中枢神経抑制のほか、中枢神経系抑制や筋弛緩薬残存などがある場合に生ずる舌根沈下による上気道狭窄等が挙げられている。

 呼吸抑制ないし低換気の発見、診断方法としては、呼吸数、呼吸様式、呼吸の深さを観察するなどの視診や、呼吸音を聴く聴診、意識レベル・筋力レベルのチェック等が挙げられている。チアノーゼが見られるともされるが、貧血の場合には著明に現れないとされる。また、血中酸素飽和度をモニターすることも推奨されている。

 気道閉塞から心停止に至るまでの時間については、概ね五分から一〇ないし一二分程度であると考えられている。

弁護士 池田実佐子