第1 はじめに

 今回は「膵臓(すいぞう)」について書きます。膵癌は原発性膵腫瘍のうち外分泌系における上皮性悪性腫瘍のことです。膵癌の大部分は、膵管上皮から生じる浸潤性膵管癌です。膵癌は早期発見が難しいため、症状の出現時には、進行癌であることが多く、一般的に予後は不良です。

第2 診断

 膵癌は高齢者に好発しやすく、腹痛、黄疸、腰背部痛、体重減少、消化不良の症状が見られ進行癌で発見されることが多いです。また急激な糖尿病の発症または悪化などがみられ、糖尿病の先行発症が半数以上にみられます。血液検査では、膵酵素上昇(アミラーゼ、リパーゼ)、胆道系酵素上昇、CA19-1・CEA上昇等が認められます。また、腹部超音波検査で、膵管の拡張、低エコーの腫瘍、小嚢胞などが認められます。さらに、腹部造影CT検査で、低吸収の腫瘍、膵管の拡張等が認められます。MRCP(MR胆管膵管撮影)で膵管、胆管の狭窄、途脱、拡張等が認められます。
 これらの所見があるときは、膵癌と診断されます。

第3 治療

  1. 遠隔転移、主要血管(腹腔動脈、上腸間膜動脈)への浸潤がない場合は一般的に切除可能となります。切除可能となる場合は、外科的切除と術後に化学療法(又は化学放射線療法)がなされます。そして、膵頭部癌に対しては、膵頭十二指腸切除が基本で、膵体尾部癌に対しては、膵体尾部切除が基本となります。
  2. 遠隔転移はないが、周辺重要臓器への浸潤のため切除は困難な局所進行例の場合は、化学療法又は化学放射線療法の治療が行われます。
  3. 遠隔転移がある場合は、化学療法がなされ、ゲムシタビンやTS-1が用いられます。
  4. 切除不能例に対しては、それぞれの症状に合った緩和治療が行われます。閉塞性黄疸がある場合、胆管ステント留置、胆道ドレナージ、胆道バイパス術をし、消化管閉塞の場合、消化管バイパス術をし、疼痛がある場合は、モルヒネの投与や腹腔神経叢ブロックなどが行われます。

第4 終わりに

 以上のように、膵癌は、早期発見が難しいため、症状の発見時には進行癌であることが多いです。また、根治治療は切除のみであり、重要臓器への浸潤や遠隔転移がある場合には外科的治療ができなくなります。

 裁判例には、神戸地裁昭和63.12.14は、①膵癌を発見できなかったことにつき医師の過失を認め、②過失と死亡の因果関係は否定されたが、患者の期待権を侵害したという事例もあります。この裁判例のように、膵癌が発見できなかったことの過失が認められるとしても、膵癌の早期発見は難しく、進行癌の状態になって過失が認められることから、進行癌の段階で発見できても、根治治療が不可能な場合が多いことから、因果関係が認められにくくなります。