(1)薬剤副作用(アナフィラキシーショック)とは何か。

 アナフィラキシーとは、以前に曝露された抗原に再暴露することにより引き起こされる急性の、生命を脅かすIgE媒介性のアレルギー反応を指す。
 薬剤副作用として反応はアナフィラキシー様反応と呼ばれる病態もあり、アナフィラキシーと臨床上では区別できないが、IgEは関与せず、事前の抗原曝露は関係がない。

(2)薬剤副作用(アナフィラキシーショック)が起こる仕組み

 抗原に感作されることにより、その抗原に特異的なIgEが作られることが原因となり起こる。
 以前に曝露された抗原に再度曝露することにより、肥満細胞や好塩基球表面のIgEが抗原と結合しIgE受容体を架橋し、これらの細胞が活性化され、貯蔵メディエータが放出され続けることで起こる。
 最終的には、毛細血管からの漏出、細胞浮腫や平滑筋の収縮などが起こる。

(3)薬剤副作用(アナフィラキシーショック)の症状

 主な症状としては、呼吸困難や窒息感、めまい、かゆみ、くしゃみ、鼻漏、悪心、腹部痙攣、下痢など。
 予期せず急速に発生し、急速に悪化するため救急医療が必要とされる。

(4)薬剤副作用(アナフィラキシーショック)の予防

 既知の誘因物質(トリガーとなる可能性のあるもの)との接触を回避することである。

(5)裁判例

 予期せず急速に発生し、急速に悪化するというアナフィラキシーショックの特性から、従前、訴訟では医師の責任が否定される例が多かった。
 しかし、①の最高裁判例医師の責任を肯定する姿勢を示してからは、医師の責任が厳格に判断される傾向がある。

① 最判平成16年9月7日判タ1169号158頁

 抗生剤投与によるアナフィラキシーショック死に関し、以下のとおり述べて抗生剤投与後の経過観察義務及び発症後の救急救命措置義務の違反を認めて医師の責任を肯定した。

「以上の諸点に照らすと,Y2が,薬物等にアレルギー反応を起こしやすい体質である旨の申告をしているBに対し,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある本件各薬剤を新たに投与するに際しては,Y2には,その発症の可能性があることを予見し,その発症に備えて,あらかじめ,担当の看護婦に対し,投与後の経過観察を十分に行うこと等の指示をするほか,発症後における迅速かつ的確な救急処置を執り得るような医療態勢に関する指示,連絡をしておくべき注意義務があり,Y2が,このような指示を何らしないで,本件各薬剤の投与を担当看護婦に指示したことにつき,上記注意義務を怠った過失があるというべきである。」

② さいたま地方裁判所平成22年12月16日判決

 虫歯治療の際に受けた局所麻酔剤注射によるアナフィラキシーショックに起因する呼吸循環不全で幼児が死亡した事件。
 裁判所は、医師が局所麻酔剤の投与後にバイタルサインを観察すべき注意義務に違反した過失を肯定したものの、死亡との間の因果関係は否定して、生存する相当程度の可能性の侵害による損害賠償を認容した。

③ 東京地方裁判所平成21年2月23日判決

 被告の開設する病院において、造影CT検査を受けた患者が検査の際に投与された造影剤に起因するアナフィラキーショックを発症して死亡した事例。
 裁判所は、担当医師らには原告らが主張する診断・治療義務違反や救命準備義務違反があったと認めることはできないとして原告の請求を棄却した。

④ 青森地方裁判所弘前支部平成15年10月16日判決

 歯科医師から麻酔薬を投薬されて患者が死亡したことにつき、患者の遺族である原告らは、歯科医師等に診療契約上の債務不履行があると主張した事例。
裁判所は、原告らが主張する問診義務違反、局所麻酔剤の注射注射手法違反、救護違反はないとして、原告らの主張を棄却した。

弁護士 藤田 大輔