第1 はじめに

 前回は大腸癌を取り上げましたが、今回は、「肺癌」について書いていきます。大腸癌は、生存率は高いと前回書きましたが、肺癌は、大腸癌に比べて、生存率は低くなっています。また、脳転移などのリスクも高いです。したがって、早期発見できないと、予後が悪くなってしまします。

第2 肺癌

1 肺癌の病態等

ア 肺癌の分類

 肺癌は,発生部位により,中心型(肺門型),末梢型(肺野型),中間型に分類され,中心型(肺門型)は,区域気管支より中枢の太い気管支に発生するものをいい,末梢型(肺野型)は,亜気管支より末梢に発生するものをいう。また,肺癌は,組織型により,腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌,小細胞癌に分類されるが,このうち,発生の多いのは腺癌と扁平上皮癌であり,腺癌は,末梢型に多く,扁平上皮癌は中心型に多い。

 扁平上皮癌は,肺門部の主気管支や葉気管支に多く発生し,気管支上皮を癌組織で置換しながら進展し,気管支内腔の狭窄や閉塞を来す。扁平上皮癌は,更に高分化型,中分化型,低分化型に分類される。また,扁平上皮癌は,ダブリングタイム(体積が2倍になるのに要する時間)が平均100日程度であるとされている。

イ 肺癌の病期(stage)分類

 肺癌の病期(stage)についてのTNM分類について,概要,以下のとおり定めている。

 T分類は,原発腫瘍による分類で,T0からT4までがあり,T0は,原発腫瘍を認めないもの,T1は,腫瘍の主径が3.0cm以下で,健常肺組織又は肺肋膜に囲まれているものや気管支鏡的に癌浸潤が葉気管支より中枢側に及んでいないもの,T2は,腫瘍の主径が3cm以上のもの,主気管支に浸潤が及ぶものなど,T3は,大きさと無関係に隣接臓器に直接浸潤するもの,T4は,大きさとは無関係に縦隔,心臓,大血管,気管,食道,椎体,気管分岐部に浸潤が及ぶものなどとされている。

 N分類は,所属リンパ節への転移の有無による分類で,N0からN3までがあり,N0は,所属リンパ節に転移がないもの,N1は同側気管支周囲及び(又は)同側肺門リンパ節の転移などがあるもの,N2は,同側縦隔リンパ節転移及び(又は)気管分岐部リンパ節への転移のあるもの,N3は,対側縦隔,対側肺門,同側又は対側鎖骨上リンパ節転移のあるものをいうとされている。

 M分類は,遠隔転移の有無による分類で,M0とM1があり,M0は遠隔転移がないもの,M1は遠隔転移があるものをいう。

 TNM分類に基づいた病期(stage)の分類は,以下のとおりとされている。

 Ⅰ期  T1~2,N0,M0
 Ⅱ期  T1~2,N1,M0
 ⅢA期 T1,N2,M0 T2,N2,M0 T3,N0~2,M0
 ⅢB期 T関係なし,N3,M0 T4,N関係なし,M0
 Ⅳ期  T関係なし,N関係なし,M1

ウ 原発性肺癌の症状

 原発性肺癌の主な症状は,咳(咳嗽),痰(特に血痰),胸痛,喘鳴,呼吸困難,嗄声などであり,閉塞性肺炎になると発熱する。発熱,呼吸困難,嗄声などの症状は,転移が進むなどかなり進行した場合に現れる。また,中心型(肺門型)は,咳や痰などの症状が出やすいが,末梢型(肺野型)は,初期は無症状の場合が多く,集団検診等で発見されることが多いとされている。

エ 中心型(肺門型)早期肺癌の検査方法

(ア) 早期肺癌とは,癌の浸潤が組織学的に気管支壁を超えないで,かつ,リンパ節転移,遠隔転移がないものと定義されており,日本肺癌取扱い規約による内視鏡的肺門部早期肺癌の診断基準は,①病巣は気管から亜区域支までに限局している,②癌巣の末梢辺縁が内視鏡的に可視できる,③病巣の長径が2cm以下である,④組織学的に扁平上皮癌である,などである。肺門部の早期肺癌の予後については,80~100%と良好である。

(イ) 中心型(肺門型)早期肺癌の検査方法
 胸部X線撮影,喀痰細胞診,CT検査,気管支鏡検査などがあり,集団検診や職場検診では,胸部X線撮影によって異常陰影が認められた者,喫煙歴の長い高危険度群の者などに喀痰細胞診が行われている。CT検査は,胸部X線撮影で異常陰影が認められた場合に行われ,気管支鏡検査は,喀痰細胞診の結果,異型細胞が認められた場合に行われることが多い。

2 喀痰細胞診検査

(ア)咳,痰などの気管支症状,それも持続する症状を主訴とする場合は肺癌を疑って,喀痰細胞診などの精検を行い,血痰を主訴とするときは肺癌を強く疑わなければならず,血痰患者には喀痰細胞診を手軽に行わなければならない。

(イ)肺門部肺癌の中に胸部X線写真で異常陰影として検出できない肺癌があり,このような肺癌には外科的手術療法で完全治癒の望める早期肺癌が多く,その診断に喀痰細胞診が非常に有力である。

(ウ)肺癌の検査方法の一つとして喀痰細胞診があり,咳,血痰を訴える40代以上の人及び胸部異常陰影のある人に喀痰細胞診を実施する。