1.多系統萎縮症とは

 シャイ・ドレーガー症候群は、多系統萎縮症のひとつです。多系統萎縮症には、この他にオリーブ橋小脳萎縮症と線条体黒質変性症があり、特定疾患(難病のうち厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象に指定された疾患)の27番目に認定されています。

 シャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症の3つは、小脳系、黒質線条体系、自律神経系に病変を持ち、グリア細胞と神経細胞内にα‐シヌクレイン陽性の封入体を有する共通の病理所見が見られることから多系統萎縮症と総称されます。

 多系統萎縮症は、成年期に発病する非遺伝性脊髄小脳変性症のなかでは代表的な疾患で、主に小脳系、黒質線条体系、自律神経系が障害され、小脳症候を主徴とするものがオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、起立性低血圧、排尿障害、睡眠時無呼吸(喉頭喘鳴)などの自律神経症状を主徴とするものがシャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome、SDS)、動作緩慢、小刻み歩行、姿勢反射障害などのパーキンソン症状を主徴とするものが線条体黒質変性症(SND)です。

2.シャイ・ドレーガー症候群とは

 中年以降に発症する神経変性疾患で、自律神経障害が主症候であり、経過中に小脳症候やパーキンソン症候が加わってきます。CT、MRI上、小脳、橋の萎縮が見られ、緩徐進行性に悪化します。シャイ・ドレーガー症候群では、初期から、臥位から起立するとき立ちくらみが起こり、進行すると失神が起こる起立性低血圧が見られます。又、排尿障害があり、初期から排尿困難、頻尿があり、進行すると尿失禁を伴います。この他、自律神経障害として、食事性低血圧、睡眠時無呼吸などが見られます。小脳症候やパーキンソン症候は、初期は目立ちませんが、経過中緩徐に現れ、進行すると小脳徴候は目立たなくなり、パーキンソン症候が顕著になります。

 原因は、今のところ不明で、治療法として、発病や進行を阻止出来るような効果的な治療法はありませんが、自律神経症状やパーキンソン症状に対しては、対症療法がとられます。パーキンソン病との鑑別が必要とされます。

 一般に、数年~10年前後で臥床状態となり、生命予後は全身の管理状態にもよりますが、尿路感染症や肺炎を併発して死亡することが多く、また、睡眠時無呼吸などにより突然死する可能性があるとされます。

※小脳症候:小脳症状の主体は、運動失調で、歩行運動失調、失調性構音障害、肢節運動失調、持続性注視眼振が見られます。

3.パーキンソン病との鑑別

 パーキンソン病は、神経変性疾患の一種で、中脳黒質のドパミン作動性神経細胞の変性脱落によって、その神経終末がシナプスを作る線条体でドパミン不足をきたし、錐体外路性運動障害が出現する疾患で、補充療法であるL-DOPAが著効し、ドパミン受容体刺激薬、抗コリン薬も有効です。

 生命予後は、治療の進歩によりほぼ一般人口と大差がないところまで改善しています。

 パーキンソン病は、パーキンソン症候が特徴ですが、自律神経障害を伴うことも稀ではなく、シャイ・ドレーガー症候群と症状が似ているため鑑別が必要です。パーキンソン病では、画像検査で特別な異常が見られません。パーキンソン病と多系統萎縮症等との鑑別診断では、抗パーキンソン病薬であるレボドパへの反応性が重要とされ、シャイ・ドレーガー症候群ではレボドパへの反応が乏しいのに対し、パーキンソン病はレボドパに反応します。

参考文献
内科学 第9版 杉本恒明・矢崎義雄編、朝倉書店 P1798-1801

弁護士 石黒麻利子