今回は、傷害を被ると身体に重篤な機能障害を残すことになる「脊髄」に関して、お話してみようと思います。
 まず、類義語について区別しておくため、少々、補足説明します。首から骨盤に至るまでの背骨全体を脊柱といいます。その脊柱は、幾つもの骨の集合であり、一つ一つの骨が脊椎です。すなわち、脊柱は脊椎で構成されており、その脊椎を部位で分け、上部から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎と呼んでいます。そして、脊椎は中央部が空洞となっていて、その頸椎から尾椎に至るまでの空洞部分に入っているのが脊髄です。脊髄も脊椎同様、部位によって頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられます。この脊髄は、骨ではなく、神経の束です。

 ですから、脊椎という骨を損傷しただけなら単なる骨折で大事ではありません。ただ、脊椎が骨折するほどの外力が加われば、その中を通る脊髄にも影響が及ぶ場合が殆どです。
 脊髄の神経は、中枢神経系に属し、感覚、刺激等内外からの情報を読み取る器官からの信号を受けて、それを筋肉などの作動器官へ伝える役割を果たします。かかる中枢神経系はいったん損傷されると、現代医学では二度と回復できないとされています。よく聞くリハビリによる回復というのは、損傷した神経が修復されたり、復活して機能が改善されるものではありません。損傷されていない部分に、これまでは支配領域外であった領域までカバーさせるよう、健全組織の機能向上を図る措置に過ぎないのです。

 そして、脊髄の損傷で現れる機能障害は、首に近い上位部分ほど重く、下方の骨盤に近付くほど軽くなります。例えば、頸髄が損傷されれば、呼吸筋まで麻痺し、一生、人工呼吸器付きの生活という事態もありえます。胸髄の損傷だと、両下肢麻痺により、車椅子生活を強いられ、仙髄麻痺でも排泄、勃起機能麻痺により、介護の必要な生活や性交渉困難といった重大な生活状況の変更を余儀なくされることになります。

 また、上記のような外部的要因による脊髄損傷以外にも、脊髄腫瘍や椎間板ヘルニアといった内部的要因によっても神経麻痺等が生ずる場合があります。上では説明しませんでしたが、個々の脊椎同士は、椎間板というクッションのようなものを介して繋がっています。したがって、椎間板が膨隆するなどして、脊髄が圧迫されると、首、肩、上肢、下肢の痛みないし痺れや排尿障害まで現れることもあります。もっとも、椎間板ヘルニアに対しては、鎮痛剤や温熱療法といった保存的治療が行われ、脊髄を圧迫している椎間板組織等を切除する外科的手術が施される場合は多くありません。個々の施術者により、効果にバラつきが生じ、必ずしも手術の有効率が高くないことや社会保険適用外であり、患者に高額の手術費の負担を強いる点などがその原因のようです。