(1)内視鏡とは何か。

 内視鏡とは、先端部分にレンズを内蔵した管で、外からは観察できない人体の内部を観察するために開発された医療器具である。1868年のクスマウルの「硬性胃鏡」が原型である。
 現在では、人体内部を見るだけでなく、組織の摘出や病変部の切除や止血などの治療行為を行うこともできる高度な技術が集約された高性能な医療器具となっている。
 一般に、内視鏡による手術の方がメスを入れる手術より肉体的な負担が小さいことから、医療の現場では重用されている。

(2)内視鏡をめぐる事故

 技術の進歩により、より高度の機能を有するに至った内視鏡であるが、扱いには高度の技術や経験を要するものであり、誤操作などによって臓器等に傷をつけてしまうなどの事故が起こりうる。
 実際に、内視鏡に関する訴訟件数は増加している。
 以下、いつくか裁判例を見てみたい。

①大分地裁昭和60年12月19日判決

 医師が患者に対して逆行性膵胆管造影検査を実施する際に十二指腸ファイバースコープの挿入操作を誤り、十二指腸に穿孔を生じせしめた結果、後腹膜膿瘍等を発症して死亡した事例。
 裁判所はファイバースコープの誤操作により十二指腸穿孔を生じせしめた結果として腹膜炎を発症させたとして、因果関係を肯定し、診療関与医および国らに対して、不法行為による高額の損害賠償責任を認めた。

②東京地裁平成3年11月25日判決

 医師が腹痛を訴えた患者に対して胃内視鏡検査等を行った後、患者が吐血や下血をしたため輸血をしたところ、輸血性肝炎に罹患した事例。
 裁判所は、患者が輸血によって輸血性肝炎を罹患したことを肯定しつつも、吐血や下血はマロリーワイス症候群が原因と推定して、内視鏡等検査時の胃内壁損傷によるものであることを否定し、原告の請求を棄却した。

③大阪地裁平成10年2月23日判決

 検査入院した患者にS状結腸がんが発見されたが、開腹手術ではなく腹腔鏡による切除手術を実施した。
 術後、患者の腹部に膿がたまるなどして2度にわたる開腹手術が行われたが、患者は多臓器不全等で死亡した事例。
 裁判所は、電気メスによる焼灼に際して手技の誤りがあり、十二指腸を穿孔させてこれを原因とする汎発性腹膜炎により患者が死亡したことを認め、医師の過失を肯定して損害賠償責任を認めた。

弁護士 藤田 大輔