(1)急性腹症とは何か?

 急性腹症とは、緊急開腹手術を必要とする疾患を検討すべき腹部疾患の総括的兆候である。
 急性虫垂炎は、急性腹症の中で最も多い原因疾病であるので、他の急性腹症との鑑別が重要となる。
 他の原因疾患としては、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、イレウス(腸閉塞)、急性腸炎、急性胆嚢炎・急性胆管炎、尿管結石症などがある。

(2)急性腹症の症状

 急性の激しい腹痛が現れる。

(3)急性腹症の鑑別方法

 病歴の聴取、身体の診察、臨床検査、画像診断を行う。
 以下、裁判所が前提とした鑑別方法を見てみたい。
 裁判例(名古屋地判平成23年1月14日判決)は、事案における前提事実を前提としてではあるが、急性腹症か否かの鑑別方法を具体的に示している。

「前記前提事実によれば,腹痛を訴えている患者が急性腹症であるか否かの鑑別には,問診,バイタルサインのチェック,腹部理学的所見の把握,緊急血液検査,緊急画像診断が必要となる。」

と、判示している。

 また、別の裁判例(横浜地判平成21年10月14日判例タ1321号172頁)は、急性腹症の診断手順として、

「急性腹症は年齢別に原因疾患に差があり,また,頻度の高い疾患から考えていくのが常道である。まず,患児の年齢,腹痛の性状,腹痛の部位,嘔吐,下痢,下血,発熱などの病歴及び既往歴の聴取を行い,それからバイタルサイン及び全身状態の把握,顔貌,体位,皮膚,粘膜の状態をチェックする。」

との認定をしている。

(4)試験的開腹

 試験的開腹とは、原因が分からない腹部の症例に対して、原因を特定するために行う開腹手術のことである。
 激しい腹痛を訴える患者に対し、急性腹症の原因疾患を特定するために行われることがある。軽度の腹痛であれば、経過観察することが好ましい。

弁護士 藤田 大輔