1 「心房内錯位症候群」

従来の「無脾症(候群)・多脾症(候群)」を包括する概念
脾臓のない無脾や複数の脾臓をもつ多脾は、複合心疾患や臓器の錯位(位置の異常)が合併し、1つの症候群を形成する
本来非対称性の発育を示す臓器や臓器系が対称性の発育をする
無脾症:右側構造・右側左右対称を示す 本件
多脾症:左側構造・左側左右非対称を示す

2 合併症

①心疾患(のうち本件に関係するもの)

単心房
単心室
総肺静脈還流異常(これに合併した肺静脈閉塞) 等

②合併消化管異常 

腸管の回転異常や胆道閉鎖
突然の嘔吐、腹部膨満、強度の腹痛→腸管の回転異常や固定障害による腸管閉塞を疑う
・・・本件有

③重症感染

無脾症に化膿性髄膜炎や敗血症などが多発
突然死の原因に肺炎球菌による超重症感染有

3 診断

本症候群の診断の上、予後を左右する合併症心疾患を診断することが肝要
新生児期から乳児期早期は、心エコーとMDCTが最良

4 管理・治療

①出生後心疾患を診断し、姑息的外科介入までの管理
肺血流増加群の場合:外科介入は肺動脈絞扼手術
→管理:強心薬・利尿薬・血管拡張薬など
肺血流減少群の場合:外科介入は体肺動脈短絡手術
→管理:短絡路の形成までPEG1製剤による動脈管の維持

②無脾症に対する感染防止と適切な対処

③Fontan型手術を目指した術前管理と術後の長期管理
 (外科治療としては、Fontan型手術のほか、解剖学的心内修復術、心移植)

「Fontan型手術」 極めて珍しい心臓外科手術

機能心室が1つしかない疾患において、上下大動脈を直接肺動脈にバイパスした機能的修復術

ⅰ まず

・肺動脈閉鎖例と高度の狭窄を伴う単心室症例
→新生児期後半から乳児期早期にBT短絡術で適度な肺血流維持

・肺動脈狭窄がない単心室症例
→高度な心不全と肺血管閉塞性病変が進行するおそれがあるため新生児期後半から乳児期前半に肺動脈絞扼術で肺血流をコントロール

ⅱ 生後6か月頃

両方向性Glenn手術(上大静脈を右肺動脈に逆T字型に吻合)

ⅲ 1歳半頃

Fontan型手術の適応

*CF 福岡高判平成19・6・1
先天性心疾患を有する患者が,Fontan手術を受けた際に心房を裂創され,低酸素脳症を発症して死亡
医師に手技上のミスがあったとして,債務不履行責任が認められている

*参考文献
「近畿大医誌第34巻3号」(篠原徹『心房内臓錯位症候群の臨床』)
川名正敏等「循環器病学 基礎と臨床」西村書店、2010

弁護士 池田実佐子