1 用語等

「動脈瘤」
動脈壁の全周又は局所が正常の50%以上拡張した状態で、進行すると破裂
「大動脈瘤」は、拡張することにより確実に破裂
本件、大動脈解離(大動脈内膜に亀裂が生じ、そこから侵入した血液により内膜が2層に剥離され、偽腔を形成)を伴う⇒破裂の危険が高い
「胸腹部大動脈瘤」
2~3割は大動脈解離から発生

2 治療

① 瘤の直径が5~6㎝まで

経過観察、内科的管理(血圧コントロール)

② 瘤の直径が5~6㎝を超える

 

外科手術(主に人工血管置換術)
人工血管置換術=病変部を切除する根治的治療
術後合併症:腎不全、呼吸不全、脊髄虚血による対麻痺

対麻痺予防:
・脳脊髄圧の上昇が脊髄血行不全を助長するため、脳脊髄液ドレナージが有効
・一般に、常温で20分間の大動脈遮断は脊髄虚血を惹起するに十分で、大動脈再建中又はその後脊髄血行が障害されると、対麻痺が発生
→脊髄虚血の温存を図るためには、特に高齢者や広範囲の動脈瘤では積極的に大前根動脈を含む第8胸椎から第2腰椎レベルの肋間動脈、腰動脈を再建すること重要
・肋間動脈等の再建の必要性を術中確認するため、脊髄機能のモニターとして、SEP(体性知覚電位)やMEP(運動誘発電位:こちらの方が有用との報告有)を使用

     

③ ステントグラフト治療

外科手術より低侵襲の血管内治療として注目されている
ただし、endoleak(ステント外側への血液の漏れ)や塞栓症などの問題もある
カテーテルによりステントを病変部に留置→病変部が血栓化し縮小
適応:通常は腹部大動脈瘤もしくは下行大動脈瘤
大動脈解離の場合も用いられる

*なお、「胸腹部大動脈瘤では、分枝再建が困難。積極的にステントグラフトを使用した成績は報告なし」という文献も。
術後合併症:合併症のうちの脊髄虚血による対麻痺は1.0%(文献により幅有)で、外科的人工血管置換術より低率
「ステントグラフトを胸腹部大動脈領域に留置した際の術後対麻痺発生率は低く、胸腹部大動脈手術における脊髄保護に対する従来の概念を覆すもの」との見解もある

参考文献
北島政樹等「標準外科学 第12版」医学書院、2010
武藤徹一郎等「新臨床外科学 第4版」医学書院、2010
川名正敏等「循環器病学 基礎と臨床」西村書店、2010

弁護士 池田実佐子