(1)髄膜炎とは

 髄膜炎とは、髄膜のうち、クモ膜、軟膜およびその両者に囲まれているクモ膜下腔に炎症が起きたものである。中枢神経系感染症として頻度が高い疾病である。
 髄膜炎の典型的な3徴候として、①発熱、②頭痛、③項部硬直であり、数時間から数日かけて発症する。
 発症した場合、適時に適切な治療を行わないと後遺症が残ったり、死亡したりすることがある。

(2)分類

① 感染性のもの

 急性:細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎
 亜急性もしくは慢性:結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎

② 非完成性のもの

 亜急性もしくは慢性:がん性髄膜炎、膠原病性髄膜炎、薬剤性髄膜炎

(3)診断

 腰椎穿刺を行い、脳脊髄液圧を測定して髄液の蛋白、グルコース、細胞数(白血球分画を含む)を検査し、培養とともにグラム染色を行う。

(4)裁判例

① 大阪地判平成13年10月30日判タ1106号187頁

 脳腫瘍の摘出手術に伴う合併症として髄膜炎があるところ、縫合部分では髄液漏を起こしやすく、実際に患者が髄液漏を起こした。

 病院としては、髄液等に接触して発症するMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染を防止するため、適切な処置を講ずる義務を負っているにも関わらずこれを怠って、患部を露出させたまま一時放置し、患部や被覆について適切な処置を講じなかったために患者はMRSAによる化膿性髄膜炎に感染した。

 患者が化膿性髄膜炎に感染したせいで、化学療法の開始時期が遅れ、その間に腫瘍が増大したとして、患者の死亡に対する病院の責任を認めた事例。

② 神戸地判平成15年6月12日判時1836合105頁

 ラトケ嚢胞の摘出手術を受けた患者が、手術の後、髄膜炎と気脳症という合併症に罹患した。この患者に、レンドルミンとドルミカムを併合投与したが、この併合投与は呼吸抑制を生じる危険性を高め、死亡の危険性もあった。

 このような状態の患者に対する術後の監視義務として、最低限心電図モニター等を常時装着して、患者に異常がないかを監視すべき義務があり、この義務を怠った医師の過失を認めた。

③ 新潟地判平成17年2月25日判時1913合130頁

 ウイルス性髄膜脳炎の初期症状である排尿障害を確認し、ウイルス性髄膜炎の鑑別診断のために必要な検査をする義務があったにも関わらずこれらを実施せず、抗ウイルス剤を投与する処置をしなかったとして病院側の不法行為責任を認めた事例。

弁護士 藤田 大輔