1 水・電解質補給のための輸液

 水・電解質補給のために用いられる輸液には、大きく分けると、等張電解質液と低張電解質液があります。

 等張電解質液とは、電解質の濃度が細胞外液とだいたい等しくなっている輸液製剤です。このことは、同時に輸液製剤の浸透圧が細胞外液と等しくなっていることを意味します。
 したがって、この輸液製剤は、細胞内には移行せず、細胞外にとどまることになります。
 ここから分かるように、等張電解質液では、「細胞外液」のみ増加します。

 代表的な等張電解質液には、生理食塩液、乳酸、酢酸、重炭酸リンゲル液があります。どれも医療事件を扱う弁護士にとって馴染みがある輸液製剤なので覚えておく必要があると思います。

 これに対して、低張電解質液とは、電解質濃度が細胞外液と比べて低く設定されている輸液製剤です。このことは、輸液製剤の浸透圧が細胞外液よりも低くなっていることを意味します。
 したがって、この輸液製剤は、細胞外のみならず、細胞内にも移行することになります。

2 等張電解質液

 等張電解質液は、前述したとおり、細胞外液のみ増加させる輸液製剤です。

 細胞外液のみ増加するのであれば、細胞外液のみ増加させたいときに都合がよい輸液製剤だと言えます。

 しかし、例えば、この輸液製剤の中でも代表的な生理食塩液の場合、電解質の濃度は細胞外液とほぼ等しく設定されているのですが、血漿よりもナトリウムや塩素イオンの値が高いので、高ナトリウム血症や高クロール血症を招く危険性もあるのです。

 したがって、細胞外液のみ増加させたい時に用いると便利なようにも思えますが、そのような目的で使用すると、上記のような危険が伴うことになるので、この輸液製剤を使用するのは、細胞外液の欠乏が明らかで、かつ電解質異常の詳細が不明な場合に、あくまでも応急的な手段として使用することが推奨されています(参考文献①、63頁)。

3 低張電解質液

 低張電解質液は、前述したとおり、細胞外のみならず、細胞内にも移行する輸液製剤です。

 そして、その用途に応じて、1号液から4号液に分類されております。

 電解質濃度は前述したとおり、細胞外液よりも低張に設定されているのですが、ブドウ糖を配合して浸透圧が細胞外液と等しくなるように工夫されています。1号から4号の順番でブドウ糖の配合率が高くなっています。

 1号液は、「開始液」とも呼ばれ(輸液の開始時に使用される)、生理食塩液を5%ブドウ糖で希釈してあります。そして、1号液の最大の特徴は、カリウムを含有していないことにあります。
 その結果、輸液開始時で、患者の電解質異常の詳細が分からなくても、高カリウム血症を来す危険がなく、比較的安全に使用できると言われています(このような理由で、開始液なんですね)。

 2号液は、主に脱水時の補給液として使用される輸液製剤で、ナトリウムのほか、カリウム、マグネシウム、乳酸イオンなども配合されています。

 3号液は、「維持液」とも呼ばれ、水分の喪失によって失われる電解質を補給することを意図している輸液製剤です。
 失われる電解質を想定して、ナトリウムは30~60、カリウムは10~35、塩素イオンは35~50配合されているそうです(いずれも、単位はmEq/l)。

 4号液は、術後回復液とも呼ばれ、もっぱら水分補給の目的で使用される輸液製剤だそうです。電解質の濃度が最も低く設計されております。

参考文献
①「第一線医師・研修医・コメディカルのための新・輸液ガイド」文光堂