1 最新情報

 今年の10月15日に同じテーマでブログを書きましたが、東京弁護士会発行の雑誌「LIBRA11月号」に最新情報が掲載されておりましたのでご紹介します。あくまでも2011年8月時点での最新情報なのでご注意ください。

1)東京三会方式

 一般斡旋人 1名
 患者側代理人の経験弁護士 1名
 医療機関側代理人の経験弁護士 1名
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  合計3名の斡旋人

 ※患者側代理人、医療機関側代理人というのは、患者側、医療機関側それぞれの代理人弁護士をつとめた豊富な経験を有する弁護士であって、当該紛争の当事者の代理人とは関係ありません。

 ※原則として、上記の斡旋人3名体制で行われるが、2名体制(患者側弁護士1名、医療機関側1名)、1名体制(一般斡旋人1名)もあるそうです。いずれの体制で行うかは、当事者の要望に基づいて柔軟に運用しているようです。

2)斡旋人候補者

 斡旋人候補者は、患者側15名、医療機関側15名、合計30名が名簿に登録されています。

3)実績

 2007年9月(創設時)から2011年8月までの実績です

 応諾率 申立件数のうちの約6割

 和解率 応諾した件数のうちの約6割

 和解額 10万円単位~100万円単位の範囲が多い

 手続期間・期日回数  平均手続期間 5~6ヶ月 平均期日回数 3~4回

 和解条項 金銭支払条項のほか謝罪・再発防止・守秘義務に関する各条項が多い。

2 分析

 ここからは私の分析になりますが、応諾率が約6割ということは、約4割はADR手続きを入り口で拒否していることになります。つまり、話し合いのテーブルについていないわけです。

 そして、和解が成立するのは、応諾された約6割のうちのさらに約6割ということですから、申立てられた件数を母数にとると、和解率は約36%ということになります。
 したがって、申立てられた全体の約36%は、このADRで紛争を解決していることになるのですが、約64%は未解決で終了していることになります。

 訴訟をせずに解決していることや平均手続期間が約半年程度と短く、期日回数も3~4回程度ですむことを考慮すると、約36%の解決率は評価に値するとも言えそうです。
 しかし、約64%がこのADRで紛争解決に至っていないことを考えると、この手続きによる解決に過度な期待を抱くことはできないでしょう。

 また、和解額も少額です。10万円単位から100万円単位が多いということですが、仮に死亡事故や重度の後遺症が残るケースのような深刻な事件であれば、お見舞金程度の和解額に過ぎません。訴訟上の和解の場合、この程度の金額だと、実質的には医療機関側の勝訴和解と評されます。
 したがって、基本的に高額な損害賠償が請求されるような案件では、ADRは不向きだと言えます。

 そうすると、ADRに馴染むのは、比較的損害額が少額で、当事者の歩み寄りがしやすい事件に限られると思います。

 さらに、斡旋人体制にも問題があると思います。

 患者側、医療機関側からそれぞれ1名を斡旋人にして中立観を出そうという工夫は分かるのですが、足して2で割れば中立になるわけでもありません。しょせんは、患者側は患者側の立場で、医療機関側は医療機関側の立場で意見を述べると思いますので、紛争性の高いケースはやはり解決できないと思います。
 その点も勘案して、いずれの立場でもない一般斡旋人を用意しているのだと思いますが、今度は専門家ではないために斡旋人としての信頼度が下がります。

 このような事情も踏まえて、ご自分のケースがこのADRに馴染むかどうか十分検討したうえで活用することをお薦めします。