(1)基本

 提訴→被告から答弁書が提出される→原・被が準備書面を提出する→尋問
 という一般的な民事事件のおける訴訟手続と変わらない。
 ただ、医療過誤の専門性ゆえに、いくつかの特徴がある。

(2)争点の把握

 一般の民事事件とことなり、医療過誤訴訟は、医学的知見を前提に法的な構成をするため、争点の把握が難しく、裁判所に正確に理解してもらうように工夫する必要がある。

(3)提訴

 損害賠償請求をするためには、債務不履行構成をとっても、不法行為構成をとっても、①過失、②損害、③①と②の因果関係を立証する必要がある。

①過失

 困難を極めるのは、過失の構成である。代理人自身がよくわからないまま提訴しても、裁判所に伝わらないことは明らかである。
 可能な限り医学文献を調査したり、協力医の協力を得て、具体的にどのような義務があり、どのように違反したのか、を特定すべきである。
 ただ、原告代理人としては考え得る過失を全て主張したくなる。
 しかし、他の過失の主張が立たなくなると、本命の過失の認定に対して消極的な心証を与えてしまうなどの弊害もある。
 一概にどこまで主張すればよいかは言えないが、証拠関係からみて有る程度立ちそうな過失に絞る方が、争点中心の審理が行われるという点で好ましいのではないかと考えられる。

②損害

 基本的に、交通事故の算定方式と同様である。しかし、被害者と加害者の立場の互換性がないことなどから、医療独自の考慮要素を取り込む必要もあろうかと思われる。
 現に、東京地判平成15年6月27日などでは、カルテの改ざんや事後の対応などを慰謝料算定要素に取り込む方向にある。

③因果関係

 非常に複雑な問題があり、原告側にとって大きなハードルといえる。
 参考判例を示しておくのでご参照されたい。
→最判平成9年2月25日判時1598号70頁
最判平成11年2月25日判時1668号60頁
最判平成11年3月3日判時1677号154頁
など。

(4)依頼を受ける際の注意点

 医療過誤訴訟は、家族が亡くなっていたり、自分の身体の一部の機能を失うなどという、物心両面で非常に大きな損害を被った人が依頼者になることが多い。

 このような被害をこうむった依頼者は、敗訴の可能性が濃厚であったとしても、真実が知りたいとか、泣き寝入りだけはしたくないので訴訟を提起してほしいと依頼してくる場合が多い。

 訴訟の目的が勝訴だけでなく、訴訟手続を通じて事実の真相を明らかにしたり、相手方との対話を実現するという側面があることにかんがみれば、証拠が全くなく勝訴の可能性が限りなくゼロに近いことが一見して明らかで有る場合や、嫌がらせ目的である場合が明らかで不当訴訟である場合を除いては、提訴することもよいのではないかと思われる。

 しかし、弁護士を雇っての裁判は、一般に人にとっては安くない費用がかかるので、費用と見通しを徹底的に依頼者に説明して、真摯な依頼を受けたうえで訴訟を提起すべきであることはいうまでもない。

 この点のバランスは、極めて難しいので、事案の性質や証拠の量や質、依頼者の資力など個々の相談の特質を正確に把握したうえで、慎重に判断すべきである。

弁護士 藤田 大輔