(1)調査手続とは

 調査手続とは、依頼者から聴き取りを行った後、医師や医療機関に対し法的責任を追及することが可能か否かの判断を行うために行われる手続のことである。
 具体的には、(2)で紹介する手続によって医療機関側から診療録等を入手し、協力医の協力や医学文献による調査を踏まえて法的責任を追及できるか否かを判断するものである。

(2)調査手続の種類

① 証拠保全手続
② 弁護士法23条の2に基づく照会手続
③ 個人情報保護法等に基づく照会手続
④ 任意開示手続

任意開示を巡る動き

 かつては、患者側からの請求により診療録等を任意で開示する医療機関はほとんど存在しなかった。
 しかし、患者の権利意識の上昇などから診療録等の任意開示を求める社会機運が高まった。そこで、以下のような経緯を経て、診療録等の任意開示を行う医療機関が増えてきた。
 1999年ころから国立大学付属病院、日本医師会等が診療録開示のガイドラインを公表した。
 2003年9月には厚生労働省も「診療情報の提供等に関する指針」を公表した。
 2005年4月から、個人情報の保護に関する法律、行政機関における個人情報の保護に関する法律、個人情報保護条例等が施行された。
 このような経緯を経て、現在では、患者側が任意に診療録等の開示を求めた場合、個別に開示する医療機関が増えた。

証拠保全の有用性

 上述のとおり、現状として任意開示に応じる医療機関は増えている。
 しかし、そのような現状においてもなお証拠保全が第一選択として考えられるべきである。
 その理由としては、①任意開示された診療記録の全てが開示されるとは限らない。②任意開示を請求した場合、医療機関側から診療記録の開示が行われるまでの時間は、医療機関側の都合に委ねられることになり、患者側は開示される までの期間、待つしかない。この期間に、医療機関側に不利益な部分が改ざんや隠ぺいされるおそれがある。
 ③任意開示では、医師や看護師当番表等、診療記録以外の記録を入手することができない。
 という理由がある。

 他方、証拠開示手続を用いれば、全ての記録を対象にできる、申立を迅速に行えば早期の記録入手ができる、というメリットがある。
ただし、証拠保全手続を弁護士に依頼した場合、患者が任意で開示を受ける場合に比べると費用が高くなるということが一般的なので、費用対効果を考えて手段を選択すべきであるといえる。

(3)診療録等を入手した後

 診療録等を入手した後は、入手した診療録等を協力医に見せて意見を聞き、医療機関側に法的責任を追及できるのか否か、するか否かを決定することになろう。
 協力医については、「医療裁判と協力医」の記事をご参照いただきたい。

弁護士 藤田 大輔