今回は「看護師の責任」というテーマで書きます。看護師の業務には①療養上の世話と②診療の補助があります。そして看護師の業務の素晴らしいところは、病気の患者さんの支えになったり、人の生命・身体・精神に深く関与したりする仕事である点です。

 ただ、看護業務の中には、人の生命・身体に危害を生ずるおそれのあることから「およそ人の生命・身体に危害を生ずるおそれのあるいわゆる危険業務に従事する者は、その業務の性質に照らし危害を防止するため法律上・慣習上もしくは条理上必要なる一切の注意をなすべき業務を負担するものであって、法令上明文のない場合といえどもこの義務を免れない」(裁決昭和37・12・28刑集16・12・1752)とされています。

 また、以前「医療水準論」の回で書いたような民事上の責任も医師と同様に看護師も負うことになります。すなわち「臨床医学の実践における医療水準」(最判平成7・6・9判時1537・3)を前提に、「診療上の世話」あるいは「診療上の補助」に関し、事故当時の臨床看護における看護知識及び技術の水準を基準として結果発生の予見義務・結果回避義務の内容が確定されることになります。したがって、事故当時の通常一般の平均的看護師の能力、知識及び技術が基準となります。そして、「事故当時の臨床看護における看護知識・看護技術の実践的水準」は厚生省のガイドライン、各学会のガイドライン、看護学文献、院内マニュアル等を参考にしながら、検討していくことになります。

「医療上の世話」業務の具体的注意義務の内容

 「医療上の世話」には、経過観察と患者の主訴に対する対応があります。 経過観察には、患者の生活的側面の観察や病室が患者にとって適切な環境であるという意味の観察、術後の管理等、患者の診療を有効ならしめるための観察があります。

 そして、「看護婦に対し、・・(患者の)容態に変化があれば直ちに当直医に報告するよう指示していないが、看護婦としては当然採るべき処置であって」(大阪地裁平成11.2.25判タ1038・242)とされており、医師の指示に従っていれば責任を負わないというのではなく、医師の指示がなくても、経過観察を行い、必要に応じて医師の診察、治療を求めることが要求されています。

「診療の補助」業務の具体的注意義務内容

 「診療の補助」は医師の行う医療行為のうち、比較的侵襲の軽微な一部を医師に代わって行うものです。したがって、看護師が診療の補助を行うには、医師の指示が必要とされています。よって、看護師は医師の指示に基づかずに診療の補助業務を行うことは許されません。

 そのため、診療の補助業務で看護師の注意義務違反となるのは、医師の指示を看護師が誤って理解した場合、具体的診療の補助行為を誤った場合です。

 以上のように、看護師には、注意義務が認められています。このような重い義務が認められるのは、看護師も患者の生命を医師とともに預かっていることの現れです。