(1)美容外科の特性

 特定の疾患を患うなどして崩れてしまった生体を正常な状態に戻すための医療ではなく、より優れた容姿を手に入れるという主観的な願望を達成する目的で行われる治療である。

 つまり、緊急性・必要性が乏しく、結果債務的な色彩を強く帯びるという特殊性がある。

 その特殊性が、要求される説明義務の内容・程度、手技水準に対してどのような影響をもたらすか。

 裁判例は、一定の効果や結果の達成を目的とするという美容外科の特殊性を重視して、説明義務を加重して考えているようである。

(2)裁判例

①横浜地判平成15年9月19日判時1858号94頁

「美容医療の場合には、緊急性と必要性が他の医療行為に比べて少なく、また患者は結果の実 を強く希望しているものであるから、意思は、当該治療行為の効果についての見通しはもとより、その治療行為によって生ずる危険性や副作用についても十分説明し、もって患者においてこれらの判断材料を前提に納得のいく決断ができるよう措置すべき注意義務を負っているというべきである。」

②東京地判平成13年7月26日判タ1139号219頁

「一般に、美容整形のための手術は、通常、医学的緊急性、必要性に乏しいものであり、また、その手術の目的が、患部の治癒ではなく、患者の主観的願望を満足させるという主観的な目的を有するものであることからすれば、そのような場合、美容整形外科医としては、まず、患者に対し、十分な問診をするなどしてその主観的願望を正確に把握した上で、あくまでもその願望に沿うように手術の部位及び方法等を勧めなければならず、安易に自己の美的価値観に従って、患者を自己の勧める手術に誘引してはならないというべきである。

 しかも、当該手術が当初患者が要求していなかったものであるとすれば、美容整形外科医は、特に、当該手術の必要性、難易度、当該手術により患者の外貌がどのように変化するか等の点について、当該患者の性別、年齢、職業、家族構成、家族の承諾の有無、美容整形手術の経験の有無等に照らして、当該患者が十分に理解できるよう詳細な説明を行って患者の承諾を得た上で、手術を行うべき義務があるというべきである。

 しかし、他方、患者に対し、当該手術の方法、効果等について自己決定に必要かつ十分な判断材料を提供して患者の承諾を行た上でならば、患者が当初要求していなかった手術であっても、その経験及び医学的知識に基づき自己の意見を述べて当該手術を勧めることも許されるものというべきである。」

③広島地判平成6年3月30日判タ877号261頁

「一般に治療行為は患者の身体に対する侵襲行為であるところ、美容整形は、その医学的必要性・緊急性が他の医療行為に比して乏しく、また、その目的がより美しくありたいという患者の主観的願望を満足させるところにあるから、美容整形外科手術を行なおうとする医師は、手術前に治療の方法・効果・副作用の有無等を説明し、患者の自己決定に必要かつ十分な判断材料を提供すべき義務があるというべきである。そして、実際に外科手術を行うについては、患者において右のように判断材料を十分に検討・吟味したうえて手術を受けるかどうかの判断をさせるように慎重に対処すべきであって、それは場合によっては説明と手術を日を変えて行なうという位の慎重さが要求されて然るべきである。」

弁護士 藤田 大輔