(1)長茎術とは何か?

 長茎術とは、主にペニスの長さを伸長するために行われる施術である。

 恥骨と陰茎海綿体をつないでいる靭帯の一部を切り離し、体内に埋没していた陰茎海綿体を引き出すことで、ペニスの長さを伸長する方法で行われる。

 また、靭帯を切らずに、陰茎海綿体を引き出し、引き出した状態で糸で固定をしておくという方法で行われるものもある。

(2)亀頭増大術とは何か?

 ペニス亀頭部の増大による見た目の改善、包茎の改善、早漏の防止、性交時の刺激増加の効果を狙い、ヒアルロン酸、コラーゲン、アクアミドなどの物質をペニス亀頭部に注入する施術のことをいう。

 注入される物質としては、ヒアルロン酸が用いられることが多いようであるが、ヒアルロン酸は最終的に人体に吸収されることになる。一般的には、注入時より半年間から1年間くらい増大効果が維持できるとされている。

 また、注入する部位を選択することにより、増大後の亀頭部の形を自由にコントロールできるとされている。

(3)包茎解消のためのコラーゲン注入が問題となった裁判例

東京地裁平成21年6月19日判時2058号69頁

 

事案の概要

 Xは、医療機関Zとの間で包茎手術等について診療契約を締結した際、割賦購入あっせんを目的とする会社であるY社との間で、診療契約に基づく治療費の支払について立替払の委託契約を締結した。

 Y社は、Xに対し、上記診療契約に関する立替金残金269万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるのに対し、Xは、消費者契約法4条第1項ないし2項による診療契約の取消し、詐欺による同契約の取消し、錯誤無効等を主張して、Y社の請求を争った事案。

判旨の重要部分

「手術を受ける者は、特段の事情のない限り、自己が受ける手術が医学的に一般に承認された方法(術式)によって行われるものと考えるのが通常であり、特段の事情の認められない本件においては、本件診療契約の締結にあたり、被告もそのように考えていたものと認めることができる。そうすると、仮に亀頭コラーゲン注入術が医学的に一定の効果を有するものであったとしても、当該術式が医学的に一般に承認されたものとは言えない場合には、その事実は消費者契約法四条二項の「当該消費者の不利益となる事実」に該当するものと解するのが相当である。そして、原告が証拠提出した各種の文献によっても、コラーゲン注入術の実施例としては、顔面の外傷性瘢痕、術後瘢痕、にきび痕、水痘後瘢痕等に対するものがほとんどであり、包茎手術における亀頭コラーゲン注入術の実施例に関する文献は皆無であることに照らし、亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認された術式であると認めることは困難であるというベきである。

~(略)~

 以上によれば、亀頭コラーゲン注入術は医学的に一般に承認されたものではなく、訴外医院は、本件診療契約及び本件立替払契約の締結にあたり、同事実を認識しながら(同術式の実施例に関する医学的文献がない以上、訴外医院が同事実を認識していたことは明らかである。)、同事実を被告に故意に告げなかった結果、被告は、亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認された術式であると誤認して本件診療契約及び本件立替払契約を締結したものであるから、被告は、消費者契約法四条二項により本件立替払契約を取り消すことができる(なお、包茎手術と亀頭コラーゲン注入術は一つの診療契約に基づく一体の手術と認められるから、亀頭コラーゲン注入術に関して被告に誤認があった以上、被告は本件立替払契約全部を取り消すことができると解するのが相当である。)。」

弁護士 藤田 大輔