(1)医療事故とは何か?

 医療事故とは、医療の過程に起因する医療サービスの受け手に生じた生命・健康等の被害をいう(患者の権利法をつくる会「医療被害防止・補償法要綱案の骨子」(2001年)参照)。

(2)医療事故の類型

① 医原病型・作為型

 検査、処置、投薬、手術等の医療行為はそれ自体に危険性が内在させている。
 この危険性は、一般に合併症、副作用、副損傷等と呼ばれており、医療を原因として内在する危険性が現実化し、発症したものが医原病である。
 医師の手技ミスや看護師など他の医療従事者による患者や薬のとり違えなどの人為的ミスを原因として発生することもある。
 また、ベッドからの転落、廊下での転倒など、医療施設から生じた危険も広義の医原病といえる。
 患者の自殺や院内感染などは作為型と不作為型のどちらに分類すべきかは難しい。

② 疾病悪化型・治療不実施型・不作為型

 医療従事者の人為的ミスや医療機関の組織的ミスなどを原因として患者に対して適切な治療が実施されなかったことにより疾病が悪化したり、2次合併症などの結果が生じる場合である。

(3)医療事故の類型と争点

 医師や医療機関の責任を法的に構成する場合、診療契約上の債務不履行責任として構成す場合と不法行為として構成する場合が考えられる。
 しかし、結局のところ要件となるのは、①故意・過失、②行為と結果の因果関係、③損害の発生である。

 では、医療事故の類型との関係でどの点が争点となるのか。

① 医原病型・作為型

 多く問題になるのが、医療行為と結果との因果関係の有無である。この場合、基礎疾患などの他原因との競合が原因となって結果が生じたのではないかという点をめぐり争いになることが多い。
 過失の有無に関して争いになる場合には、当該医療の適応ミス、当該医療を行う際の付随的義務違反、説明義務と同意取得義務違反が争点となります。

② 疾病悪化型・治療不実施型・不作為型

 注意義務違反が争点となることもあるが、不作為型では特に不作為と結果との因果関係の有無である。
 ただ、医療過誤事件における不作為と結果の因果関係については立証の困難性や当該疾患が予後不良である場合、医師の見落としが明らかであっても因果関係が否定される場合が生じ得る。

 この点に関する判例を示したい。

●証明度を「高度の蓋然性」とした判例

 最判平成11年2月25日判時1668号60頁等

 ① 因果関係の証明の程度は、作為型と同じく「高度の蓋然性」の程度が必要であると判示。
 ② 結果を「その時点においてなお生存したであろうこと」ととらえた。

●証明度を「相当程度の可能性」で足りるとした判例

 最判平成12年9月22日判時1728号31頁等

「医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。」

 と判示。

●その他の判例

 最判平成15年11月11日判時1845号63頁等
 最判平成16年1月15日判時1853号85頁等

弁護士 藤田 大輔