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閉塞性動脈硬化症(ASO)に対しては、カテーテルを用いてIVR(バルーン拡張術、ステント留置術)を実施することが多くあります。そこで今回は、ASOとIVRの概略を記します。

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閉塞性動脈硬化症(ASO)

ア 病態、症状、合併症、予後

 閉塞性動脈硬化症(ASO)とは、硬化性病変(粥状硬化[1])によって、腹部大動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、下腿動脈などに狭窄又は閉塞を来す疾患である[2]

 ASOの症状としては、痺れ、冷感、間歇性跛行[3]、安静時疼痛、潰瘍、壊死を呈する[4]

 ASOの合併症としては、脳血管障害、虚血性心疾患、高血圧、高脂血症、糖尿病、腎障害がある[5]

 ASOの予後についていえば、無症状や間欠性跛行を伴うASO患者の自然経過は、5年後に重症虚血肢まで進行する患者が5~10パーセントであり、心筋梗塞・脳卒中の発症率は20パーセント、死亡率は10~15パーセントである[6]

イ 検査、診断

 ASOを疑うのは、自覚症状として間歇性跛行、疼痛があり、身体所見として脈拍の減弱・消失、動脈雑音、潰瘍・壊死を認める場合である。そして、疑った場合には、ABI(足関節上腕血圧比)検査と超音波検査で機能的評価を行い、CT血管造影(CTA)、磁気共鳴血管造影(MRA)又は動脈造影を施行し、確定診断に至る[7]

 より詳細にいえば、まず、足関節と上腕の収縮期血圧の比からABIを求め[8]、病変部位を確認する。次に、血管造影検査、CTA、MRAなどの画像検査で血管の狭窄・閉塞部位を確認する[9]

ウ 療法

 治療には、大きく分けて運動療法(リハビリ)、薬物療法、IVR(バルーン拡張術、ステント留置術)、外科手術(バイパス等)がある[10]

 IVRのうち、バルーン拡張術とは、狭窄、閉塞した血管をバルーンカテーテル(先端に風船の着いた管)で拡げるものをいう。他方、ステント留置術とは、拡げた血管を補強するためステント(網目状の金属製の筒)を埋め込むものをいう。バルーンカテーテルもステントも細く折り畳まれた状態で体内に挿入し、血管内で拡げるようになっており、いずれも使用前の直径は2ミリメートルである。局部麻酔で行うが、治療効果が大きく、身体の負担が非常に少ないことが特長である。専門の医師が行えば非常に安全性の高い治療である[11]

 IVRを施す際、バルーンやステントの挿入経路に血腫を形成することがある。また、拡げる際に血管壁が避けて乖離を起こしたり、遊離血栓(小さな血の塊)によって血流が急に悪化したりすることがある。ただ、経験の多い医師が行えばトラブルは少ない[12]

 ASOの手術による死亡率は、3パーセント以内である[13]

 また、カテーテルによる誤穿刺をはじめ医原性血管損傷は、術者の技術的問題に由来する[14]


[1] 大動脈、冠動脈などに脂質などのアテローム(粥腫)が血管内膜に蓄積し、血管内腔の狭窄、閉塞を引き起こす(「全部見える循環器疾患」(成美堂出版、2012)140頁)。

[2] 「医学大辞典第2版」(医学書院、2009)・閉塞性動脈硬化症

[3] 間欠性跛行とも。ある一定の距離を歩くと歩行困難となり、休息により回復するが、再び歩き続けると同様の現象が生じ歩行維持困難になることを繰り返すもの(「医学大辞典第2版」(医学書院、2009)・間欠性跛行)。

[4] 「医学大辞典第2版」(医学書院、2009)・閉塞性動脈硬化症、「全部見える循環器疾患」(成美堂出版、2012)

[5] 「医学大辞典第2版」(医学書院、2009)・閉塞性動脈硬化症

[6] 「循環器専門医研修テキスト」(文光堂、2011)

[7] 「内科診断学第2版」(医学書院、2008)・閉塞性動脈硬化症

[8]足関節の収縮期血圧と上腕の収縮期血圧の比。ABIが0.9以下であれば動脈閉塞の疑いがあり、0.6以下であればASOは明らかである(「全部見える循環器疾患」(成美堂出版、2012)286、278頁)。

[9] 「全部見える循環器疾患」(成美堂出版、2012)

[10] 「動脈硬化に対するバルーン拡張術とステント留置術とは?」(IVR学会、2009)

[11] 「動脈硬化に対するバルーン拡張術とステント留置術とは?」(IVR学会、2009)

[12] 「動脈硬化に対するバルーン拡張術とステント留置術とは?」(IVR学会、2009)

[13] 「内科学Ⅰ」(医学書院、2006)

[14] 「日血外会誌10巻7号」(2001)