1.乳幼児の突然死と乳幼児突然死症候群(SIDS)

 乳幼児がうつぶせ寝をしていたところ心肺停止により乳幼児が死亡する、あるいは乳幼児に重度の後遺障害が生じることがあります。
 このような場合においてうつぶせ寝をさせたことによる窒息が原因か乳児突然死症候群(SIDS)が原因なのか争われることが多くあります。

2.乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因や危険因子

 乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、生後2週間から1歳までの乳幼児に起きる死因が明らかにならない突然の死亡であり、生後2週間から1歳までの乳幼児の死因のうち最も多い死因となっています。
 発症原因は明らかではありませんが、心呼吸器系の神経性制御機能の障害である可能性が高いとされますが詳しい原因は現時点では不明です。
 乳幼児のうつぶせ寝との関連性が高く大きな危険因子であるとする研究が多いですが、うつぶせ寝との関連性については完全に解明には至っていないようです。

 その他の危険因子としては柔らかい寝具や暖めすぎた環境、妊娠中の母親の喫煙や薬物使用、低体重児、母親が20歳未満であることが危険因子として指摘されることがあります。
 乳幼児突然死症候群(SIDS)により死亡した乳幼児を解剖しても死因は明らかにならないため、両親の苦悩は大きなものとなる可能性が高いといえます。

3.乳幼児突然死症候群(SIDS)のガイドライン

 厚生労働省は、乳幼児突然死症候群(SIDS)に関し、定義、疾患概念、診断、解剖、鑑別診断、問診チェックリストを含むガイドラインを作成しており、ガイドラインは厚生労働省のホームページで閲覧することができます(URLは http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/sids_guideline.html)。

4.乳幼児のうつぶせ寝が問題となった裁判例

 東京高裁平成13年10月17日判決(東高民時報52巻1~12号16頁)

事案の概要

 患児Xは、Y病院において平成7年1月5日に出生した。

 出産は順調であり出生時にXに異常はみられず生育状況にも問題はなく、Xのミルクの摂取や排便にも異常はなかった。

 平成7年1月8日の午前5時40分頃、Xは看護師により授乳室に隣接している新生児室内の新生児用ベッド(コット)にうつ伏せで寝かされたところ、同日の午前6時25分にXに授乳するために新生児室を訪れたところ、Xは呼吸停止、心停止状態に陥っていた。
 このため、医師らにより蘇生処置がとられXは一命をとりとめたものの、低酸素脳症による重度の脳性麻痺の後遺障害を負い、同年8月9日に気道分泌物による窒息によりXは死亡した。

 Xの両親はY病院を相手取り不法行為または債務不履行責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起しましたが、Y病院側はXが心肺停止状態に陥ったのは看護師がXをうつぶせに寝かせたことが原因ではなく未然型乳幼児突然死症候群(SIDS)が原因であるのでY病院に責任はないと主張して争った。

 第1審である東京地方裁判所は、Xの死因は窒息によるものであり、寝具の形状や材質が不適切であったことや観察が不十分であるとしてY病院の使用者責任を認めた。
 Y病院は第1審判決を不服として東京高等裁判所へ控訴した。

第2審の判断

 第2審では、まずXの心肺停止の原因として、

「うつ伏せ寝にされた後、頭の重み及び枕代わりのタオル等で鼻口部が圧迫され、生後間もなく、うつ伏せ寝に慣れていなかったためや、敷布団、枕代わりのタオル及び掛け布団代わりのバスタオルと毛布に妨げられて、適切な窒息の回避行動をすることもできず、徐々に低酸素状態に陥り、吐乳や吐物の誤嚥も生じ、だれも観察している者がいなかったため、結局、窒息にまで至ったことによるものと推認するのが相当である。」

判断しXの心肺停止の原因を窒息であると認定したうえで(詳細は割愛するが)、Y病院の管理・監督者に関し看護師に対し適切な新生児管理指導を行わなかった注意義務違反を、Xをうつぶせ寝させた看護師に関しうつぶせ寝に適した寝具を使用し寝かせた後も継続的に観察・監視すべき注意義務違反を認定し、Y病院の使用者責任を認めた。

5.コメント

 第2審の高等裁判所の判断は、Y病院側からの乳幼児突然死症候群(SIDS)の反論がされたものの、事実を詳細に検討しXの心肺停止の原因を窒息と合理的に根拠づけた点において適切な判断だと思います。

 病院側からは他の疾病等が結果をもたらしたとの反論がされることが多いように思われますが、反論として他原因を挙げる場合にはその他原因となる疾病等が発生する具体的な根拠を示されるべきであると思います。

 ただ、病院側から乳幼児突然死症候群(SIDS)のように原因がはっきりしない疾病等が他原因であると反論される場合には反論が抽象的なものならざるを得ない側面があることは否めませんので、患者側において呼吸停止や心肺停止の原因が窒息であることを具体的に主張・立証することが重要であると思われます。

弁護士 藤田 大輔