1 遺伝的素因

 神経性食思不振症が、主に思春期における家庭内の人間関係、受験・就職などのストレスにより発症すると言われていることは前回でも触れましたが、もちろんそれが唯一の本症発症原因というわけではありません。
 (前回の記事はこちら:神経性食思不振症(1)

 そして、中には遺伝的素因もあるのでないかという指摘もあります。

 遺伝的素因などと言われると、これを読んだ患者さんのご両親は気にしてしまうかもしれませんが、仮に何らかの遺伝的素因が発症に一定の影響力を持っていたとしても、遺伝的素因だけで直ちに発症するというものではないようなので安心してください。

 遺伝的素因として議論されているのは、食欲調節中枢の機能異常との関係です。しかし、この議論も食欲調節中枢の機能異常が本症に直結するということまで論じているわけではなく、ストレスがそのひきがねになるというメカニズムのようで、ラットを使った動物実験でも確認されているそうです。

 もっとも、遺伝的素因の可能性が指摘されているとはいえ、具体的にどの遺伝子かということまで特定されているわけではなく、何らかの遺伝的素因が関与している可能性が示唆されているレベルにとどまります。

2 性格傾向

 前回のブログでも触れましたが、臨床の現場で観察される、本症によく見られる性格傾向があるそうです。

 すなわち、性格的には完璧主義の志向が強く、親や学校の先生たちからの評判もいい。
 しかし、それでいて、内面では自分に自信がなく、自己評価は低い。周囲に対して不満があっても、自己主張ができない。
 こうした見た目と内面とのギャップがあるようです。
 したがって、周囲からの比較的高い評価は、本人がかなり無理して努力した結果だと言えます。

 確かに、このような性格傾向は、社会生活の中でストレスをため込みやすい性格傾向だと言えそうですが、ただ程度の差はあれ、正常な人間であれば、このような傾向って誰でもあるような気がします。

 素の自分をそのまま見せて他者と関係性を築く人なんてあんまりいませんからね。

 これがストレスを生じさせやすい性格傾向であるいことは分かるのですが、個人的にはしっくりきません。

3 家庭環境

 家庭環境って、実は必ずしも憩いの場とは言い難い面もあって、家族とはいえ他者であることか一定のストレスになりますよね。

 また、見方によっては、家族だから人間関係が難しい側面もあって、他人には求めてはいけない甘えが向けられたりしながら、それでいて一定の遠慮もあったりなんかして…。
 さらに、家族のメンバー間の関係も決して対等ではなく、優劣的立場にある人もいれば劣位にたたされている人もいる…。例えば、夫婦、母子、兄弟など、その関係は必ずしも対等ではないですよね。

 こうして考えてみると、家庭環境って、学校や職場の人間関係よりも場合によっては大きなストレスになるようにも思えます。

 家庭環境が神経性食思不振症の発症に影響を与えていることは一般的に指摘されているようです。

 臨床で観察される傾向としては、父親よりも母親優位の家庭で、時に家庭の中では無力な父親として映る場合もあるとか。無力と言っても、その父親の社会的地位とか経済力とかとは関係がないらしく、たとえ外では立派な男性でも、家庭内では無力みたいな場合もあるようです。でも、これって、現代社会ではけっこう多そう(笑)。

 そして、母親と娘の関係性にも一定の傾向があるようで、過保護で過干渉、娘を支配的養育していく傾向が指摘されております。
 このような母親の傾向の影響もあるのか、娘の傾向としては、自立性の発達が阻害されて母親への依存度が高まっている…。

 こんなことを書いてしまうと、これを読んだ世の中のお母さんたちはすごく気にしてしまうかもしれませんけど、あくまでも参考としてとらえてください。これも見方によっては、程度の差こそあれ、どのような家庭にも観察できそうな傾向だと思いますので。