前回の記事はこちら:薬剤の投与とアナフィラキシーショック 前半

補充事項

発生機序

 主たる発生機序であるI型アレルギー反応の場合は、2回目の薬物投与で症状が惹起されるが、ある種の薬物(特に抗がん剤)では初回投与時からアナフィラキシーが生じる。

遷延症例

 アナフィラキシーによる症状が発症から5~23時間持続する場合をpersistent ana-phylaxisというが、患者の28%にみられる。しかし、遷延症状はそれほど多くないという研究者も。
 死亡以外の具体的な後遺障害は未だ不明(調査上)。再発の危険を有するため、再発予防が重要との指摘が中心。

発症しやすい人

 他の医薬品でアレルギー反応の既往、食物アレルギーで特に卵又は牛乳アレルギー、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーなどアレルギー性疾患の既往。疲労なども。ぜんそくでは重篤化しやすい。  高血圧や心臓疾患、前立腺肥大の治療に用いられるβ遮断薬やα遮断薬を服用している場合

 糖尿病との関係の有無は?
 α遮断薬は脂質異常を伴った糖尿病に使用される事が多い。β遮断薬は糖尿病患者への投与は慎重になされるべきともされている。よってつながる。

裁判例

*参考
光畑裕正「アナフィラキシーショック」(克誠堂 2008)、
鈴木利廣等「医療事故の法律相談(全訂版)」(学陽書房 2009)等

 裁判例により過失の構成(上記)が明確になっている。
 適切な処置をすれば結果は回避できるとの考えが強く、一般の医療事案に比べ、過失と死などの結果との因果関係は認められやすい。

1 問診義務

 患者のアレルギー歴について問診する義務がある(横浜地判平成15・6・20、福岡地裁小倉支判平成15・1・19、青森地裁弘前支判平成15・10・16等)。

2 適応判断

 医学的適応がないにもかかわらず薬剤を投与した場合(大阪地判平成13・1・30、大阪地判平成14・1・16)は当然過失が認められ、また、必要性についても判断する義務を負う(横浜地判平成15・6・20)。

3 投与方法

 投与量が不明であることについて、適切な診療として疑問である旨指摘した裁判例有(福岡高裁平成17・12・15)。

4 観察方法

 アナフィラキシーショック発症の可能性のある薬剤を投与する場合は、①投与後の経過観察を行い、②発症後に迅速かつ的確な救命処置を取り得るような態勢を整備しておく義務がある(最判平成16・9・7、水戸地判平成17・5・18)。
 内視鏡検査の前処置であるキシロカインによる発症の事案で、検査室に救急カート等を配備しなかったことについて義務違反を認めた裁判例有(福岡高判平成17・12・15)。

5 救命処置

 ①原因薬剤の投与を中止し、②アドレナリン(ボスミン)投与、③気管挿管、輸状甲状靭帯穿刺・切開等による気道確保、④静脈路の確保と急速輸液等を迅速に行う義務がある(福岡高裁平成17・12・15、名古屋地判平成18・8・3)。

弁護士 池田実佐子