弁護士法人ALG
井内健雄

 ア 概念・定義

   直腸癌は、直腸S状部(Rs)、上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)に発生した上皮性悪性腫瘍で、下部直腸(Rb)に好発する。リンパ節転移の有無にかかわらず、原発巣の壁深達度が粘膜下層にとどまるものは早期癌、壁深達度が固有筋層より深部ものは進行癌と定義される。原発巣の壁深達度、リンパ節転移の有無、多臓器への遠隔転移の有無により病期の分類がされる。

 イ 病態生理

   直腸癌のリンパ節の転移経路としては、上直腸動脈に沿う上方転移と内腸骨動脈に沿う側方転移の2つの経路がある。上方転移は直腸癌でも認められるリンパ節転移であるが、側方転移は直腸癌に特徴的である。また、側方転移はほとんどが下部直腸癌で認められ、側方転移の認められる症例の予後は不良である。

   直腸癌の血行性転移の経路としては、下腸間膜静脈・門脈経路で肝臓へ至る経緯と内腸骨静脈・下大静脈から肺へ至る経路がある。

   直腸癌においては肺転移、肝転移ともに同頻度で認められている。

 ウ 検査所見

   注腸X線造影検査では、直腸癌のそれぞれの形態に応じた腫瘍陰影が描出される。

   リンパ節、肝臓、肺への遠隔転移の有無はCTで確認できる。

   超音波内視鏡検査も、深達度診断や壁外進展の有無、腸管周囲のリンパ節転移の診断に有用である。

 エ 治療

   原則的に腫瘍切除が行われる。

   直腸癌で粘膜下層以上の深達度のものは、リンパ節郭清を含む根治術を行う。術式は、直腸S状部癌・上部直腸癌では低位前方切除術を、下部直腸では低位前方切除術もしくは直腸切除術が行われることが多い。

 オ 予後

   切除の行われた直腸癌の5年生存率は、リンパ節転移のない症例で約90%である。再発であっても切除可能であれば外科的切除を行うことで予後の改善がみられる。

 

参考文献

標準消化器病学