弁護士法人ALG

弁護士 井内健雄

 

敗血症について

 ア 定義と診断

 (ア)敗血症

   敗血症(sepsis)とは、感染によって発症した全身性炎症反応症候群(Systemic inflammatory response syndromeSIRS)である。すなわち、infection-induced SIRSである。

 (イ)SIRSの定義・診断

   SIRSの定義は以下の4項目のうち2項目以上が該当する場合とする。

   1)体温>38℃または<36℃

   2)心拍数>90回/

   3)呼吸数>20回/分またはPaCO2<32Torr

     4)末梢血白血球数>12000m㎥または<4000m㎥、

あるいは、未熟型顆粒球(band)>10%

 (ウ)感染判断について

    血液培養で病原微生物が検出される(菌血症)、あるいは血液中に病原性微生物の毒素が検出される必要はない

    また、病原性生物が証明されなくても、感染に対する全身反応としての敗血症が強く疑われる場合は感染として扱う

イ 敗血症の重症度分類

(ア)重症敗血症(severe sepsis

   重症敗血症は敗血症の中で、臓器障害や臓器灌流低下または低血圧を呈する状態であり、臓器灌流低下または灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿、意識混濁などがふくまれる。

(イ)敗血症性ショック(septic shock

   敗血症性ショックは重症敗血症のなかで、十分な輸液不可を行っても低血圧(収縮期血圧<90mmHgまたは通常よりも>40mmHgの低下)が持続するものである。

ウ 感染症の診断

(ア)培養検体の採取について

   すべての症例において、抗菌薬投与開始前に、血液培養を行う。同時に、推定感染原因部位から検体を無菌的に採取し、塗末検査と培養同定・感受性検査を行う

   いずれの検体採取も、抗菌薬投与の開始前に行うべきであるが、このために治療開始が遅れることがないように留意する。採取検体のグラム染色による塗末検査は、安価で簡便な迅速検査法のひとつであり、施行してもよい。

(イ)代表的な感染症の原因部位と代表的な原因菌について

   原因となる感染部位は、腹腔内、呼吸器、血流(カテーテル関連を含む)、皮膚・軟部組織、尿路などが多い。原因菌としては、黄色ブドウ球菌(MRSA,MSSA)、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、エンテロバクタ属などが多い。

  エ 抗菌薬治療

  (ア)経験的抗菌薬投与のタイミング

     診断後、1時間以内に経験的抗菌薬投与を開始する。

  (イ)感染症、原因菌別の経験的治療薬

     経験的治療では、原因感染症を推定し、その感染症で疫学的に頻度の高い原因菌を十分にカバーできる広域抗菌薬の投与を行う

     適切な経験的治療を行うためには、原因となった感染源を推定し、感染症が起きた場所や医療行為の関連の有無などを加味し、原因となる微生物を想定する

     そして、「考えやすい原因」として、「カテーテルや医療行為関連尿路感染症」が考えられる場合、「想定される原因菌」は「大腸菌、緑膿菌、腸球菌」であり、「推奨薬」として、「TAZ/PIPC,MEPM,または、CPFX」が推奨されており、「注意事項」として「緑膿菌を含むグラム陰性桿菌および腸球菌のカバーを外すべきではない」とされている。

  (ウ)標的治療薬

     原因菌が確定したら、感受性結果を評価し、抗菌薬を標的治療薬に変更する。

  オ 敗血症に合併するDIC,多臓器不全について

    感染などを契機に単球をはじめとする免疫担当細胞や血管内皮細胞から様々なサイトカインが放出され、血管内凝固活性が起こり、血管内でトロンビンが産出される。その結果フィブリノゲンがフィブリンとなり、凝固第13因子によりフィブリンポリマーとなる。その後血小板や赤血球等が粘着し、血管内血栓を形成する。その結果、その血栓が各臓器の血流を障害し、多臓器不全を招来する。

    このように、敗血症から、DICが発症し、その後多臓器不全と陥るのである。

 

 

参考文献

日本版敗血症診療ガイドライン