弁護士法人ALG&Associates

弁護士 金﨑 浩之


《因果関係》

   横浜地判H24.5,24(判例3、割合的認定)

MRSAの感染時期や化膿性関節炎、骨髄炎の発症時期は厳密に確定できないが、化膿性関節炎は未だ発症していなかったか、発症していたとしてもごく初期の段階であった可能性が高い。骨髄炎については、未だ発症していなかった可能性がさらに高い。→症状の進展を阻止できたか、その程度を軽減できた可能性は十分あった。

・被告病院がMRSAに対する早期治療義務を尽くしていたとしても、結果の発生を完全に阻止できたと考えるのは困難。→割合的認定

   名古屋高判金沢支部H24.4.18(判例4、VCMの抗菌力と因果関係)

 MRSA腸炎にVCMを使用した場合の正常化日数は34日(「宮崎大学医学部付属病院HP」)。

MRSA腸炎にVCMを使用すれば、34日でCRPや発熱状態が改善される(「社団法人日本感染症学会HP」)。

 →本件でも正常化し、または正常化に至らなくても死亡は避けられたと認めるのが相当。

   東京高裁判H21.9.25(判例7、VCMの抗菌力と因果関係)

※被告は、VCMが時間依存性の抗菌薬であることを理由に、結果は避けられなかったと反論。

裁判所は、VCMの有効率と奏功時間を分析して因果関係を肯定。

   東京地判H15.10.7(判例21VCMの抗菌力と因果関係)

※被告は、MRSAの効果について、臨床的には効果が認められるまでに2日~4日を要することが多く、効果の現れ方が非常にゆっくりで効き目が悪い、という反論をしている。

・重症敗血症の時点でVCMを投与した場合の死亡率は約10%~20%にとどまる。敗血症性ショックの時点でVCMを投与した場合の死亡率は約46%~60%と死亡率は高率。

 敗血症後早期に適切な抗菌薬開始されれば、ショックの発現頻度は少なくとも2分の1に減少する。ショック発現後でも速やかに適切な抗菌薬の治療が施行されれば、有意に死亡率が低下する。

 →715日午後7時ごろの時点では、患者はまだ敗血症性ショックに陥っていなかったと認められ、…VCMを投与していれば、患者がARDSやDICを発症し、MOF状態となり、心停止により低酸素脳症に陥るという本件結果を回避することができた高度の蓋然性が認められる。

※被告は、VCM投与後も創の培養からMRSAが検出されていた事実に照らし、VCMを常用投与しても有効な血中濃度が得られない症例であったと主張(鑑定人同旨)。

・VCMの血中濃度を継続的に測定していないのであるから、被告の主張は採用できない。

   大分地判H21.10.1(判例6、MRSAの治癒と因果関係)

・患者の全身状態の改善が見られなかったのであるから、他に死亡原因があると認められない限り、MRSA感染症により全身状態が悪化したことが死因であると認めるのが相当。

   大分地判H21.10.1(判例6、TSSと因果関係)

※患者は、MRSAを含む黄色ブドウ球菌のトキシック・ショック症候群であり、その場合は治療方法が確立しておらず、高率で死に至ると被告側が反論。

これに対する裁判所の認定は、

VCMを投与したにも関わらず、患者が死亡する確率は、6.8%である。MRSA腸炎の場合でも、60歳~69歳で8.9%である。

・被告が注意義務を尽くしていれば、VCMの経口投与は、34日早まった。

→患者の予後を好転させる事情があることは明らか。

   東京高判H21.9.25(判例7、TSSと因果関係)

・原告主張の時期までにVCMを投与していれば、約23時間30分後のARDS、約25時間30分後のDIC、約3639時間後のショックを回避し、約56時間15分後の心停止を回避することができた蓋然性は高い。

※被告は、TSS(=トキシック・ショック・シンドローム)の発症を根拠に、原告(被控訴人)が主張する時期にVCMの投与があっても、結果はさけられなかったと反論。

裁判所は、CDC(アメリカ疫学調査センター)のTSS診断基準を使って、被告の反論を斥けている。

   名古屋地判H19.2.14(判例12、延命利益)

※実際に患者が死亡した当時において、未だ生存していた相当程度の可能性はあると判断するのが相当(最判H12.9.22)。

   東京地判H18.11.22(判例13、延命利益)

・患者の死に対しては、癌死の影響が大きいと認定されているが(病理解剖)、混合感染による敗血症が死期を早めたと認定された。