弁護士法人ALG&Associates

弁護士  金﨑 浩之


1 はじめに

 「子どもは小さな大人ではない」(A child is not a small adult.)という言葉は、医学の世界では言い古された格言です。

 つまり、子どものカラダの生理現象は、大人とは違う、という意味です。

 したがって、このことが適切な診断や治療を行うために、大きく影響してくる場合が起こりえるのです。

 先日報道された東京女子医大のプロポフォール事件では、薬剤の投与量も問題とされておりましたので、ここで少し、子どものカラダが大人とどのように異なっているのか、特に、その薬理学的特殊性について概観したいと思います。


2 薬剤の吸収

 ・正期産児では、生後3ヶ月頃までに成人に近い胃酸分泌能に達すると考えられています。但し、早産児では、胃酸分泌能も未熟で、十分発達するのに時間がかかると言われています。

 ・皮膚からの吸収を前提とする薬の投薬には注意が必要です。
 なぜなら、年齢が低ければ低いほど吸収率が高くなるため、それを考慮して投与量を決定する必要があるからです。


3 薬剤の分布

 ・小児は成人と比べると、細胞外液の割合が高くなるという特徴を有しています。
 したがって、投薬するときには、次のようなことを考慮します。

 ①水溶性の薬物:成人のほうが小児よりも血中濃度が高くなる。

 ②脂溶性の薬物:小児のほうが成人よりも血中濃度が高くなる。

 ・新生児は、血中の総タンパク量が低くなります。その結果、タンパク結合していない遊離型薬物の割合が高くなるので、薬理活性が強まる可能性が高くなります。
 ということは、タンパク結合の強い薬剤を投与するときには注意が必要となります。


4 薬物の代謝

 ・主な代謝機構が肝臓であることは成人と同じです。しかし、その代謝能の発達という点では、成人とは異なります。

 ・第一相(=加水分解):乳児期に急速に発達して成人レベルとなります。

 ・第二相(=抱合):硫酸抱合は新生児期から機能するが、グルクロン酸の抱合は緩やかに発達します。


5 薬物の排泄

 ・薬物の主な排泄経路は腎臓です。

 ・新生児の場合、糸球体濾過率は成人の約30%~40%です。
 しかし、生後数ヶ月程度で成人と同レベルに達します。

 ・尿細管の分泌能も成人の約20%~30%ですが、生後半年くらいで成人と同レベルに達するようです。


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参考文献

・大橋京一ほか編「疾患からみた臨床薬理学・第3版」(じほう社)