辯護士 井内健雄(弁護士法人ALG&Associates)










(1)前立腺生検について

 ア 前立腺生検の概要

 (ア)方法

    前立腺生検は、肛門から超音波検査の機械を入れ、前立腺の内部の様子を調べ、その後直腸内腔から直径約1.5mmの針を前立腺へ向かって6~12箇所刺し前立腺の組織を採取する検査である。

 (イ)感染症等の危険性

そして、生検の時は大便の通り道から針を刺すので細菌を前立腺に押し込み、前立腺炎を引き起こし、高熱が出る危険がある。穿刺後に前立腺炎を起こすことがあり、前立腺炎が起こると高熱が出現し、点滴治療が必要になる。また、まれに、敗血症(菌が血液にのって全身に広がり影響が出た状態)が出現する可能性がある。感染リスクとして、生検後の発熱の頻度は0.1~4%、敗血症の頻度は0~0.5%あり、発熱、感染症など(急性前立腺炎、敗血症など)37.5℃以上の発熱が出たら、感染症のおそれがある。そして、発熱を放置すると重症感染症(敗血症)に移行する危険がある。ただ、発症早期に強力な抗生剤を投与すれば、まず大事に至ることはない。



 イ 泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドライン

   泌尿器科領域における手術期感染予防ガイドラインの「Ⅳ.前立腺生検」欄には次のような記載がある。

 (ア)抗菌薬予防投与

    抗菌薬予防投与なしでは検査後の感染をきたすことは多く、予防抗菌薬投与は必須である。投薬時期に関しては、検査後より検査前に投与すべきであり、投与薬剤に関してはニューキノロン系薬が有効である。

    そして、High risk群の場合、①LVFX200mg×3(経口)【検査前(0.5~2時間)、検査後2時間後および検査8時間後投与に加えて、翌日以降、常用量を2から4日継続投与】、②PIPC/TAZ2.5g×3(点滴静注)【検査前0.5時間、検査後4時間後および検査12時間後投与に加えて、翌日以降、ニューキノロン系薬常用量を2から4日間投与】が奨励されている。

    なお、High risk群には、糖尿病患者が含まれている。

 (イ)検査後の経過観察

    1~2%に前立腺炎・菌血症が起こることは、不可避的であることを認識して当たるべきである。検査後数日は発熱、排尿状態を患者本人に十分観察してもらうなど、感染発症の早期把握につとめるための綿密なモニタリングが必要である。

 (ウ)検査後に発症した感染症治療

    最も注意すべき原因菌はニューキノロン系薬耐性大腸菌である。本菌感染治療には、第2~4世代セフェム系薬、カルバペネウム系薬が有効である。嫌気性菌の敗血症も報告されている。検査後の発熱に対しては各種培養(尿培養、血液培養)検査を施行の上、速やかな抗菌化学療法、全身管理(抗ショック、DIC療法を含む。)を行う

(2)前立腺炎

   前立腺炎とは、泌尿器科領域で頻度が高い疾患の一つであるが、その病態はいまだに不明な点が多い。前立腺炎は種々の病態の混合した疾患と考えられている。前立腺炎症症候群とも呼ばれる。前立腺炎の原因には、細菌性と非細菌性とがある。

   急性前立腺炎は大腸菌を主体とする感染であり、発熱や強い会陰部痛を呈する。

(3)大腸菌(Escherichia coli

   グラム陰性の通性嫌気性桿菌で、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の代表菌種の1つである。大腸菌の大部分は腸管にいる限り正常細菌叢の1つであり、特別な病気を起こすことはないが、何らかの理由で腸管外に迷入した場合は、膀胱炎、腎盂腎炎、胆嚢炎などの異所性(腸管外)感染症を引き起す







参考文献

標準泌尿器科学 前立腺生検 医学書院

泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドライン

標準泌尿器科学 前立腺炎 医学書院

医科細菌学 大腸菌 南江堂