1 Clostridium difficile

・嫌気性グラム陽性菌
・院内下痢症で最も多い原因微生物。偽膜性腸炎の原因菌。
・健常成人の5%が保菌。保菌率は65歳以上で著しく上昇。
・周辺環境が自身の成長を支えられなくなると芽胞を形成し、数ヶ月間生存できる。

2 病原性

・トキシンA:好中球・単球を引き寄せる。
・トキシンB:結腸の表皮細胞を攻撃して、結腸炎や偽膜形成、水様性下痢を引き起こす。
・027高病原性株:16倍のトキシンA、23倍のトキシンBを産生する。binary toxinという毒素産生。

3 リスク因子

・ハイリスク抗菌薬の投与歴

キノロン系(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど)
第2、第3世代セフェム系(セフォタキシム、セフタジジム、セフロキシムなど)

・高齢者(65歳以上)
・長期入院
・胃酸分泌抑制薬の投与
・免疫抑制薬の投与
・経腸栄養(20%のリスク)
・流動食(C.difficileに有利な培地)

4 臨床所見と病態

・抗菌薬治療開始後、約5日~10日(数日~2ヶ月の幅あり)から始まる下痢。
・軽症から粘血便を伴う重症の下痢まで様々。
・感染患者の下痢は、馬小屋のような臭いが特徴。
・高齢者では、脱水症状を伴い重症化することもある。
・合併症:結腸炎、偽膜性腸炎、中毒性巨大結腸症、穿孔、エンドトキシン・ショックなど。

5 診断法

①細胞毒素試験

・培養細胞に対して、トキシンBによる細胞毒性を検出する。
・結果判明までに最大72時間を要す。

②酵素免疫測定法

・トキシンA、Bを検出する。
・安価、簡便、迅速である。
・細胞毒素試験と比べると、感度・特異度共に劣る。

③PCR法(ポリメラ-ゼ連鎖反応)

・感度・特異度共に良い。
・迅速な確定診断として優れる。
・高病原性027株も特定できる。

④グルタミン酸脱水素酵素(GDH)

・他の菌種でも交叉反応を示すため、非特異的。
・他の検査を追加して確定診断とする。

⑤便培養

・同定に時間がかかり、毒素産生株と毒素非産生株の区別ができない。

6 治療法

①患者の腸内細菌叢の変化をもたらした抗菌薬の投与を中止・変更する。
②腸管蠕動抑制薬の使用を避ける。

・下痢は毒素や病原体を排出しようとする反応。腸管蠕動抑制薬は、毒素や病原体を体内にとどめてしまうため、かえって病態悪化を招く。

③輸液

・下痢が治まり経口摂取が再開できるまで点滴。

④抗菌薬

・第一選択薬は、経口メトロニダゾール。
・バンコマイシンは、VCM耐性腸球菌の出現可能性があるため、第二選択。

⑤重症度モニター

・排便回数、白血球増加、血清クレアチニン、腹部所見、X線所見で、常に重症度をモニター。

参考文献

・岩田健太郎監修「感染予防、そしてコントロールのマニュアル」(メディカル・サイエンス・インターナショナル)183頁~187頁