ア 概念

胆嚢癌とは,胆道癌のうち,胆嚢及び胆嚢管に生じるものをいう。

 

イ 病因

胆嚢癌の病因は不明であるが,胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常があることは胆嚢癌の危険因子であり,予防的な胆嚢摘出術が推奨されている。

 

ウ 病態生理

胆嚢は粘膜筋板をもたないため,浸潤,転移しやすい。肝,腹膜,リンパ節などへの転移に加え,隣接臓器への浸潤も肝臓(胆嚢床部),胆管,門脈,冠動脈,胃,十二指腸,結腸,膵,腹膜など多彩である。

 

エ 診断の流れ(胆道癌のうち,胆嚢癌に即したもの)

(ア)第1段階【疑い】

臨床症状(主訴,臨床所見),血液検査所見,危険因子を考慮して,胆嚢癌を疑う。

  a 臨床症状

  胆嚢癌の臨床症状は右上腹部痛が最も多い。但し,多くの胆嚢癌は相当進行するまで無症状に経過する。

その他の症状として,悪心,嘔吐,体重減少,黄疸,食欲不振,腹部膨満感,掻痒感,黒色便である。但し,体重減少,食欲不振などの症状を訴えることは少ない。

b 血液検査所見

    胆嚢癌に特徴的な血液生化学検査所見はない。腫瘍マーカーのCA19-9,CEAが上昇することもある。ガイドラインの診断アルゴリズムによれば,胆嚢癌を含めた胆道癌では,CA19-9が50~79パーセントの症例で,CEAが40~70パーセントの症例で上昇するとのことである。しかし,早期には概して正常域にある。

  c 危険因子

    胆道癌のうち胆嚢癌の危険因子は,胆管非拡張型の膵胆管合流異常である(既述)。

(イ)第2段階経腹超音波(US)検査所見【疑い】

   まずは,非侵襲的な画像診断法として,経腹超音波検査(US)を行う。その結果,胆管拡張や胆嚢病変を認めた場合には,次の第3段階へと進む。

なお,胆嚢癌では50パーセント以上の症例で腫瘍が描出される。

(ウ)第3段階EUS等検査所見【診断,鑑別】

経腹超音波検査で胆嚢病変を認めた場合,鑑別診断と癌の進展度診断が重要であり,そのためには,EUS(超音波内視鏡),CT,MRI,MRCPなどを行うことが勧められる。

EUSによる胆嚢良性病変と胆嚢癌の鑑別は,感度92パーセントと良好である。また,深達度診断にも有用である。

検査所見上,胆嚢ポリープの径が10ミリメートル以上であり,かつ,増大傾向を認める場合,又は,大きさに拘らず広基性の場合,胆嚢癌の頻度が高い。

なお,桑実状,金平糖様の茎があるものを有茎性というのに対し,比較的なだらかに隆起した,茎を持たない形状を広基性という。

 

オ 治療

(ア)確定診断の場合

  以上の結果,胆嚢癌と診断された場合には,治癒を期待できるのは外科的療法のみであるから,遠隔転移がない限りは,根治切除を目指す。具体的には,癌の進展度に応じ,胆嚢摘出に加えて,リンパ節郭と肝切除,胆管切除,膵頭十二指腸切除を組み合わせる。

具体的には,日本消化器病学会によると,以下の通りである。

・ステージ(癌が粘膜あるいは筋層内にとどまっており,リンパ節転移はない段階)の場合には,胆嚢摘出のみを行う。

・ステージ(胆嚢のすぐ近くだけにリンパ節転移があるか,又は,癌浸潤が筋層を超えるが漿膜・肝実質・胆管にとどかない段階)の場合には,胆嚢摘出に加えて,胆嚢に接する肝臓の一部と胆嚢の近くのリンパ節の切除を行う。

・ステージ(胆嚢から少し離れたリンパ節転移があるか,又は,漿膜浸潤,軽度の肝浸潤,右側の胆管浸潤のいずれかがみられる段階)又はステージ(胆嚢から遠いリンパ節転移があるか,又は肝浸潤や胆管浸潤が高度であったり,腹膜や遠隔臓器に転移していたりする段階)の場合には,胆嚢と胆管,肝臓の一部とリンパ節を切除して,胆汁の通り道を再建するほか,膵頭部や十二指腸の切除を行うこともある。但し,ステージの中でも特に進行したものは切除不能である。

  (イ)疑診の場合

胆嚢癌の疑診にとどまる場合でも,胆嚢ポリープの径が10ミリメートル以上であり,かつ,増大傾向を認めるとき,又は,大きさに拘らず広基性のときには,胆嚢癌の頻度が高く,胆嚢摘出手術が推奨される。

 

カ 予後

胆嚢癌は壁の深達度により生存率が著しく異なり,mpまでの早期癌であれば,5年生存率は100パーセントに近い。他方,多臓器浸潤を伴うような高度進行癌では,その予後は極めて不良とされている。

胆嚢癌切除例のステージ別の5年生存率は,ステージが87パーセント,ステージが68パーセント,ステージが41パーセント,ステージaが23パーセント,ステージbが6パーセントである。

 

医学文献

・医療情報科学研究所編「病気がみえるvol.1消化器」(メディックメディア,2010)270頁

・浅香正博他編「カラー版 消化器病学 基礎と臨床」(西村書店,2013)1423~1429頁

・胆道癌診療ガイドライン作成委員会編「エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン(第1版)」(2007)(http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php#)CQ-4,CQ-6,診断アルゴリズム

・日本消化器病学会ホームページ,医学用語集,胆嚢癌,胆嚢癌の病気と治療法(http://jsge.or.jp/cgi-bin/yohgo/index.cgi?type=50on&pk=D34

以上