弁護士法人ALG&Associates

弁護士 金﨑 浩之


1 TSSとは

 TSSとは、toxic shock syndrome の略で、黄色ブドウ球菌が産生する毒素(TSS-1、エンテロトキシンなど)によって急激にショック症状が引き起こされることをいう。

 突然に高熱、嘔吐、下痢、精神錯乱、発疹などをきたし、短時間にショック、多臓器不全へと進展する重篤な症候群。

 一旦TSSが発症すると、細菌を抗生剤で死滅させても、すでに産生された毒素の作用が止まらないため、TSSの進行を止めることは難しいとされている。


2 訴訟で何が問題とされるのか

 訴訟では、被告病院から、「TSSをすでに発症しているので、仮に適切な時期に抗菌薬の投与を開始したとしても、結果(死亡や後遺症)を避けられなかった可能性が高い」というように、因果関係を否定するためのロジックとして主張されることがある。

 これに対抗するロジックとしては、CDC(アメリカ疫学調査センター)が示している、TSSの診断基準が便利である。

 TSS診断基準

①体温が38.9度以上、②収縮期血圧が、90mmHg以下の低血圧、③びまん性の斑状紅皮症の発疹、④発症から1~2週間でみられる落屑、⑤発症時における嘔吐又は下痢のような消化管障害、激しい筋痛等の筋障害、GOT、GPT値が正常値の2倍以上の肝障害、血清クレアチニン値が正常値の2倍以上の腎障害、意識障害などの中枢神経障害、粘膜障害、血液障害という臓器系の障害が3つ以上の多臓器障害、⑥血液、咽頭、脳脊髄液等の培養検査の検査結果が陰性である。

上記①~⑥の6項目全てを満たすこと。

 したがって、これらの6項目全てが満たされているわけではない。→TSSはいまだ発症していない。→適切な抗菌薬投与で救命できた可能性は十分ある。

と反論できる。

 実際に、そのように反論して、原告側が勝訴した事例として、

東京高裁平成21年9月25日判決

がある。

一読に値する。