大阪支部  弁護士  浅田 有貴


【病態・概要】

 乳がんは乳管ないし小葉の上皮細胞から発生する。乳がんの中で,乳管の細胞から発生したものを乳管がん,小葉の細胞から発生したものを小葉がんという。

 上皮細胞は基底膜に覆われているが,がん細胞が発生した乳管ないし小葉の基底膜にとどまっている場合を非浸潤性といい,基底膜を破って周囲の健康な組織にまで拡大した場合を浸潤性という。浸潤性乳がんはさらに通常型・2a型(乳頭腺管がん,充実腺管がん,硬がん)と特殊型・2b型に分類される。

 

【診断・検査】

 乳がんは初発症状としてしこりや乳頭の異常分泌等が現れることが多いため,自己検診は診断に有用である。その他,マンモグラフィ,超音波検査,細胞診,針生検,マンモトーム生検,CT検査,MRI検査,乳管内視鏡といった諸検査を組み合わせて行い確定診断を行う。

 特に乳がん検査の方法としてよく挙げられるマンモグラフィは,乳房を専用のX線装置で撮影して,乳腺組織の性状を調べるものである(「MMG」と省略されることがある。)。乳腺組織の中に乳がんが発生すると,マンモグラフィには石灰化像やトゲのある腫瘍陰影が映る。日本マンモグラフィガイドライン委員会によって,マンモグラフィ読影の基準がカテゴリ1ないし5まで定められている。もっとも,乳がんのすべてがマンモグラフィで異常を示すわけではないので,正診率は100%ではない。

 

【乳がんの病期とTNM分類】

T(原発巣),N(所属リンパ節転移の有無),M(遠隔転移の有無)を調べて病期を判断する。

T T0 原発巣が視触診でも画像でも確認できない

  T1 しこりの大きさが2cm以下

  T2 しこりの大きさが2.15cm

  T3 しこりの大きさが5cmを超える

  T4 皮膚に表出した場合(大きさを問わない)

N N0 所属リンパ節転移なし

  N1 腋窩リンパ節に転移の疑い

  N2 腋窩リンパ節に固定されたリンパ節に転移の疑い

  N3 胸骨傍又は同側鎖骨上リンパ節に転移の疑い

M M0 遠隔転移なし

  M1 遠隔転移あり(M1の場合TNの数値によらずⅣ期となる)

 

【治療】

 再発乳がん(乳がんの治療後,乳房部に限らず,他臓器に乳がんが転移した場合も含む。)の場合は根治が難しく,ホルモン療法が奏効しなければ化学療法を考慮する。ラパチニブ,ベバシズマブ,デノスマブといった分子標的治療薬の併用も考えられる。

 原発性乳がんの場合は病期Ⅲ期に至るまでは手術療法の適応となる。手術方法は,①定型的乳房切除術,②拡大乳房切除術,③非定型的乳房切除術,④単純乳房切除術,及び⑤乳頭乳輪温存皮下乳房切除術があるが,①②は行われることが少なくなり,乳房温存手術が行われることが増えている(ただし,乳房切除術に比して若干再発率が高いとの報告がある)。

 

【術後治療】

 乳がんはその種類,悪性度によって予後が異なる。

 手術療法を行った後は放射線治療を行うほか,ホルモン療法,化学療法,分子標的治療薬(トラスツズマブ・登録商標は「ハーセプチン」)による治療を行うことが考えられる。

 トラスツズマブはHER2に結合することで,HER2と他のがん細胞増殖因子との結合を抑制し,がんの増殖を防ぐ分子標的治療薬である。HER2とは乳がん細胞の細胞膜上に過剰に発現している蛋白質であり,がん細胞増殖因子と結合することによってがん細胞を増やす働きをする(乳がん全体の2530%に発現する。)。正常の細胞にはHER2の発現はほとんど見られないので,トラスツズマブはがん細胞にのみ効果を発揮する。

 

【参考文献】

・今日の治療方針 2011/医学書院

・病気がみえるvol.9Medic Media

・乳がんテキスト/南江堂

・「乳がんの基礎知識」/ウェブサイト

・乳がんの病理QA集/ウェブサイト