大阪支部  弁護士  浅田 有貴


【過失なし】

① 大阪地判 H16.9.29H15()6740

[争われた過失の内容]

 ・歯科医師が,患者の智歯に抜歯の適応がないにもかかわらず抜歯したか否か(歯術の適応に関する注意義務の存否)


[判断]

 ・患者の受診時,患者の智歯周辺組織に炎症が生じていたことから,患者の智歯には抜歯の適応があった。


② 東京地判 
H15.9.11H13()26361

[争われた過失の内容]

 ・智歯抜歯の際に歯科医師が患者の舌神経を傷つけることを可能な限り回避すべき注意義務の存否

 ・同義務の存在を前提に,これを全うするために何をすべきだったかという具体的注意義務の内容
  →A 抜歯の際,智歯の歯牙分割を上下の2分割にするだけでは不足で,舌側と頬側の左右2分割も含めた4分割とすべきだったかどうか

 B 抜歯に困難を伴うときは,歯槽骨の一部を除去して抜去すべき智歯の方向を変えるべきだったかどうか


[判断]

 ・智歯抜歯の際に歯科医師が患者の舌神経を傷つけることを可能な限り回避すべき注意義務自体はある。

 ・しかし,A,Bいずれの具体的注意義務も,そのような手技を行うべきであったことを裏付ける資料が提出されていないため認められない。


③ 東京地判 
H15.12.24H15()227
[争われた過失の内容]

・前医(口腔外科)で智歯を抜歯した際に,抜歯器具のかけらが患者の口腔内抜歯部分に入り込んだまま縫合されたところ,後医(矯正歯科)が歯肉に埋没した抜歯器具の存在に気付いて診療を行うべき注意義務の存否


[
判断]

・通常抜歯器具のかけらが抜歯部分に入り込むことはあり得ないこと,及び,後医の専門が矯正歯科であったこと,及び後医は口腔外科専門医である前医を紹介していること等から,後医の注意義務違反はない。


【過失あり】

○ 富山地判 H19.1.19H17()272
[争われた過失の内容]

・歯科医師が智歯抜歯を行う際,患者に下顎骨骨折を起こさないよう,そのままの状態では抜歯が困難な場合には,状況に応じて歯牙分割や歯槽骨切除を行うなどして,無理な外力を加えずに抜歯すべき注意義務があるか否か


[判断]

 ・上記注意義務はある。そして,本件の歯科医師には,患者の智歯が水平埋伏歯であり,そのままでは抜歯が困難な状況にあるのに,歯牙分割等を行うこともなく,約2時間程度かけて無理な外力を加えて抜歯を行い,その結果患者に下顎骨骨折を生じさせた注意義務違反がある。