5 ガイドラインによるTOLACの準則

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が共同で編集・監修した『産婦人科診療ガイドライン―産科編2014』(以下、単に「ガイドライン」といいます。)によれば、TOLACは次の準則に従って実施されるべきものとされています(2014年版ガイドラインCQ403)[脚注1]

  1. リスク内容を記載した文書によるインフォームドコンセントを得る。(A)
  2. 以下の要件をすべて満たしている場合に、経膣分娩をトライアルできる。(C)
     1)児頭骨盤不均衡(CPD)がないと判断される。
     2)緊急帝王切開及び子宮破裂に対する緊急手術が可能である。
     3)既往帝王切開回数が1回である。
     4)既往帝王切開術式が子宮下節横切開で術後経過が良好であった。
     5)子宮体部筋層まで達する手術既往あるいは子宮破裂の既往がない。
  3. 分娩誘発あるいは陣痛促進の際に、プロスタグランジン製剤を使用しない。(A)[脚注2]
  4. 経膣分娩選択中は、分娩監視装置による胎児心拍数モニターを行う。(A)[脚注3]
  5. 経膣分娩後は、母体のバイタルサインと下腹痛に注意する。(B)[脚注4]

 上記文中、(A)、(B)、(C)は推奨レベルであり、一般論として、(A)は「強く勧められる」、(B)は「勧められる」、(C)は「考慮される」を意味します。

 ただ、ここでの(C)は、「すべてを満たす患者にのみ行うことが望ましいが、すべてを満たさない患者においても、その医療行為が選択肢として排除されているわけではない」という意味であり(ガイドライン「本書を利用するにあたって」)、単に「考慮される」にとどまらない、比較的通用力の高い準則であることには注意が必要です。

≪参考文献≫

  • 『産科婦人科診療ガイドライン―産科編2014』(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会、2014)
  • 岡井崇・綾部琢哉編『標準産科婦人科学』515~516頁(医学書院、第4版、2011)
  • 石原理他編『講義録 産科婦人科学』366~367頁(メジカルビュー社、第1版、2010)
  • 『今日の治療指針』(医学書院、2011年版)「帝王切開後経膣分娩」

以上

[脚注1] そもそも、医療過誤訴訟(診療契約の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求訴訟)が認容されるには、過失ありと認定されることが必要です。そして、この過失は、当該診療行為が、当時、医療水準に適っていたか否か、により決せられます(最三判昭和57年3月30日など)。そして、産科事件の医療水準を画するにあたって大いに参酌されるのが、ガイドラインなのです。ただ、大いに参酌されるにすぎず、これのみによって医療水準が画されるわけではないことには注意が必要です。

[脚注2] プロスタグランジン製剤を使用した場合に子宮破裂のリスクが有意に高いため。

[脚注3] 子宮破裂等の徴候を少しでも早く捉えるため。

[脚注4] VBAC後に子宮破裂が顕在することもあるため。