1.未破裂動脈瘤

 未破裂動脈瘤とは、脳動脈が部分的に瘤状などに拡大・拡張したものであり、血管の分岐部に発生しやすい性質があり、特に内頸動脈と後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部、前交通動脈の3つの部位が好発部位です。

 自覚症状がない場合も多いですが、大きくなると神経を圧迫し複視や視野障害などの症状が発生することがあります。
 また、動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血を発症し、患者が死亡したり重篤な後遺障害を残すことが多いです。

2.未破裂動脈瘤の治療法

 動脈瘤が小さいうちなどは血圧をコントロールするなどして経過観察を行うことが多いですが、動脈瘤の大きさが5~7mmを超える動脈瘤や不整形なもの、bleb(突出して膨れている部位)を伴うもの等は破裂の危険が大きいため、予防的に開頭動脈瘤頸部クリッピング術(直接に動脈瘤をクリップで挟んで破裂を防ぐ手術)や動脈瘤コイル塞栓術(動脈瘤内にコイルを詰めて塞栓する血管内手術)を行う必要があります。

 開頭動脈瘤クリッピング術は、根治治療としての確実性は高い一方で侵襲性が高いので高齢者などに対しては不向きな治療法です。

3.未破裂動脈瘤の治療に関する医師の注意義務

(1)術式選択に関する注意義務

 未破裂動脈瘤は、破裂した場合にはクモ膜下出血を伴い致命的な状況となることが多い一方で、手術適応については基準が明確には確立されていないため、医師は手術適応を慎重に見極め術式の選択を行う必要があります。

 裁判では、手術適応をめぐる医師の注意義務違反の有無を巡り争われることがありますが、これを認めた例はそれほど多くありませんが、無症候性の未破裂動脈瘤に対する架橋静脈の切断を伴うクリッピング術が行われた場合に手術適応がなかったとした例(東京地裁平成12年5月31日判タ1109号214頁)があります。

(2)手技に関する注意義務

 手術手技における医師の注意義務違反の有無をめぐり争われることもあります。
 手技における医師の注意義務違反が認められた裁判例としては、①京都地判平成12年9月8日判タ1106号196頁、②名古屋地判平成23年2月18日、③名古屋地判平成24年2月17日、④福岡地裁大牟田支判決平成14年4月9日 判タ1092号246頁などがあります。

(3)説明義務

 予防的な手術手技による治療には医学的に明確な適応基準が確立されていないことから、医師は患者に対し、術式ごとの利害得失につき具体的かつ十分な説明を行い患者に十分な理解をさせたうえで、手術を受けるのか否か、手術を受けるとしてもどの手術をどの時点につき受けるべきかについて明確な同意を受けるべきです。

 裁判において、医師の説明義務違反の有無が争われる事案は少なくなく、説明義務違反を認めた判例・裁判例としては①最判平成18年10月27日 判時1951号59頁②札幌地判平成15年7月25日などがあります。

弁護士 藤田 大輔