1 用語について

GIST腫瘍(胃腸管間質腫瘍)

 胃・腸管の壁から発生する間葉系腫瘍で、40~60歳の成人に好発。胃に多い。
 腫瘍径が5cmを超え、核分裂像が高倍率10視野中2個以上ないし分裂期細胞が7%以上を占める腫瘍は高悪性度腫瘍に分類され、予後が悪い。
 小・大腸に発生するものは一般に予後が悪い。

転移性肝癌

 肝臓は悪性腫瘍の血行性転移を最も受けやすい臓器
 多発性が多い

腹膜炎

 腹膜の炎症性疾患。その経過により急性、慢性、病変の範囲により汎発性、限局性に分けられる。

癌性腹膜炎

 本来の炎症とは異なるが腹腔内臓器の癌が腹膜に及んだもの。
 予後は不良。

DIC(播種性血管内凝固症候群)

 何らかの原因により、極端な血液凝固性亢進状態を生じ、主として細小血管内に血栓の多発をきたし、このため消費性凝固障害を呈する症候群。
 手術をした場合にも生ずる。
 血栓による循環障害に基づく様々な臓器障害がみられる。

治療手段

1 早急にDICの原因除去
2 1が難しい時は血管内凝固の発現を阻止する目的で、比較的少量のヘパリンが点滴静注される
3 他に濃縮血小板血漿や新鮮凍結血漿による補充療法なども

2 考えられる過失の構成

(1)治療懈怠
  ↓
(2)転送時期:
① 症状悪化時の転送
② 転送の遅れ
③ 転送先の適否

①に関する適切な転送時期に関する裁判例

損害賠償請求事件、債務不存在確認請求事件 福岡地裁H19.2.1
ギラン・バレー症候群は、症状のピークを過ぎた後回復に向かう疾患だから回復を待って転送が望ましいことを前提として
ギラン・バレー症候群の患者の転送は

ⅰ 患者の自律神経の状態が安定していること
ⅱ 医師が患者の呼吸状態の変化を客観的に把握することができる機器を携行、

又は
 患者が息苦しさ、動悸等の自分の呼吸の変化及び自律神経障害に係る自覚症状を意思表示できる状態になっていること

②に関する裁判例(最判H15.11.11)要約

 本件診療中、点滴を開始したもののおう吐の症状が治まらず、軽度の意識障害等を疑わせる言動があり、これに不安を覚えた母親から診察を求められた時点で、その病名は特定できないまでも、本件医院では適切に対処することができない、急性脳症等を含む何らかの重大で緊急性のある病気にかかっている可能性が高いことをも認識することができた。

 この重大で緊急性のある病気のうちには、その予後が一般に重篤で極めて不良であって、予後の良否が早期治療に左右される急性脳症等が含まれること等からすると、その時点で、直ちに患者を診断した上で、適切に対処し得る、高度な医療機器による精密検査及び入院加療等が可能な医療機関へ患者を転送し、適切な治療を受けさせるべき義務があった。

転移性肝癌の治療法

 外科的切除、化学療法、経皮的局所療法など。
 原発臓器により方針異なる。
 本件のGISTの場合、外科的切除にて原発巣の残存がなく、肝以外の転移がなく完全に切除可能なら肝切除。
 切除不能な場合、イマニチブ(分子標的薬。BCR-ABLチロシンキナーゼを阻害。GISTに対する効果は反応性が良好ならほとんど1か月以内に発現し、その場合の予後は良好)の投与。
 切除不能な場合、経皮局所療法(経皮的エタノール注入療法、経皮的マイクロ波凝固法など)や化学療法。

癌性腹膜炎の治療方法

 化学療法、温熱療法、免疫療法、外科的療法
 予後は不良で、腹水穿刺などの対症療法。
 制癌剤や免疫賦活剤の腹腔内注入により腹水の減少をみることも。

弁護士 池田実佐子