大阪支部  弁護士  浅田 有貴

【添付文書の記載事項】

当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が,投与を受ける患者の安全を確保するために,これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するもの。


【添付文書の記載に従う医師の義務】

 医師が医薬品を使用するに当たって添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず,それによって医療事故が発生した場合には,これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り,当該医師の過失が推定される。


【過失推定の要件】

①医師が添付文書の使用上の注意に従わなかったこと

②当該医薬品の使用によって,添付文書の使用上の注意の記載が防止しようとした副作用等の問題が生じたこと

③医師が添付文書の使用上の注意の記載に従わなかったことにつき特段の事情がないこと


【医療慣行は特段の事情になるか】

添付文書の記載が「2分に1回患者の血圧を計測すること」となっていた一方,当時の“医学界の常識”が「5分に1回患者の血圧を計測することで足りる」とされていた場合,5分に1回の血圧測定で十分と判断したことに特段の事情は認められない。
 医療慣行に従ったからといって,求められる医療水準に達する治療を行ったとは必ずしもいえない。


【添付文書の記載に従っていれば投薬に関する医師の過失は無いのか】

 薬剤の添付文書の記載が「患者本人または近親者がアレルギー体質を有する場合には慎重に投与すること」となっていた場合に,当該薬剤の注射がショック症状を起こしやすいものであり,右症状の発現の危険のある者を識別するには医師による患者本人及び近親者のアレルギー体質に関する適切な問診が必要であることが当時の臨床医の間で一般的に認められていた等の事実関係のもとにおいては,医師がかかる問診をしないで右注射をし,これに起因するショック症状の発現によって患者を死亡させたときは,当該医師に医療上の過失があるとされている。


【参照】

・医療訴訟の実務

・最三判平成8123日民集5011頁(ペルカミンS事件)

・最二判平成14118日判時180930頁(フェノバール事件)

・最三判昭和6049日金判2939


以上