医師の手技上の過失が否定された事例

 東京地判平成20年7月10日

 大阪地判平成20年2月13日

 最判平成18年10月27日集民221号705頁(手技上の過失について原審判断を是認)

事案

 未破裂脳動脈瘤の存在が確認された患者がコイル塞栓術を受けたところ、術中にコイルが内頸動脈内に移動したためコイルを回収しようとしたところ成功せず、さらに開頭手術を行ったがコイルの全部を除去することができなかったため、残存したコイル及びこれによる血流障害によって惹起された脳梗塞で患者が死亡した場合

・コイル塞栓術を選択したことについて→過失なし

判断根拠事実

 患者の年齢が術時61歳であったこと、放置した場合に患者の余命のうちに脳動脈瘤が破裂する可能性が40%程度あったこと、患者が高血圧であったこと、当時コイル塞栓術に実施成功例の報告が多かったこと、動脈瘤の存在位置が開頭手術の難しい部位であったこと、塞栓不可の場合コイル抜去も可能とされていたこと、医師の技能が未熟であったと認められないこと

・コイル塞栓術の実施上の手技について→過失なし

判断根拠事実

 手術前にCT撮影・血管造影検査を実施していたこと、動脈瘤の大きさがいわゆるワイドネック(コイル塞栓術の適応がない)でなかったこと、塞栓できるかどうかわからないときにコイル塞栓術を試みること自体は過失を構成しないこと、血栓化防止策が不十分であったとは認められないこと、コイルが術中にほどけたことが医師のコイル操作ミスや過圧によるとは認められないこと、コイルのほどけ現象を起こした部分を医師が掴んだためにコイル回収が失敗したとは認められないこと、開頭手術の実施時期について判断ミスがないこと、コイル回収を継続すること自体に高度の必要性が合った以上回収可能性の低いリトリーバーで回収作業を継続したことは医師の判断として相当といえること

医師の手技上の過失が認められた事例

 名古屋高判平成15年7月16日/平14(ネ)242号

 名古屋地判平成23年2月18日

 名古屋地判平成24年2月17日/判例集未登載

過去掲

 医師らがデリバリーワイヤーとマイクロカテーテルのX線不透過マーカーを十分に合わせなかったことから、デリバリーワイヤーがマイクロカテーテル先端部から進み出て、これにより動脈瘤壁を穿孔したため患者がクモ膜下出血を発症したという事実が認定された。

 注意義務違反の内容は、執刀医らのマーカー合わせが不十分であったこと。

以上
大阪支部  弁護士  浅田 有貴