印環細胞癌について

 弁護士 金﨑 浩之

1 特徴

・粘液細胞への分化が目立つが、腺管形成は乏しい腺癌

印環細胞 signet ring cell が優位(腫瘍の50%以上)であると、印環細胞癌と診断される。

・組織レベルでは、腺管形成が乏しいために未分化型に分類されているが、細胞レベルでは分化している。

・腫瘍の100%が印環細胞からなるものはない。

胃型腸型がある。

・印環細胞癌は相互接着性が低下してバラバラに見えることが多いが、細胞接着が低下することを印環細胞癌の基本的要件とするかどうかについて、コンセンサスはない。

・印環細胞癌は粘膜内でよく見られ、粘膜外を深部に浸潤すると少なくなる傾向あり。
→印環細胞癌と診断できるものは早期胃癌に多く、進行胃癌では少なくなる


2 臨床

早期癌に多いので比較的予後も良く、5年生存率は75%~85%

・印環細胞癌の多くは高率にスキルス胃癌になると考えられているが、多くの場合、低分化腺癌に変化してから。


3 肉眼、画像所見

・早期癌では、0-Ⅱc型が一般的

粘膜ひだの痩せや途絶を伴う。

4 Implication

 印環細胞癌は、高率でスキルス胃癌に発展していくので、進行癌として発見された場合、スキルス胃癌ないし4型胃癌として診断され、それ故に、医療機関側から、癌の見落とし事案において、延命の可能性が低いとして、因果関係を否定する主張が展開される可能性がある。

 しかし、このトリックに引っかかってはならない。

 上記の通り、印環細胞癌は初期病変に多く、その段階で発見されれば予後は良いのである。これが胃壁に浸潤してスキルス性を獲得すると予後不良となるに過ぎない。

 したがって、スキルス胃癌の悪性度をもって、印環細胞癌の悪性度の根拠とする主張には理由がない。
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引用文献
「腫瘍病理鑑別診断アトラス 胃癌」深山正久・大倉康男編集(文光堂)75頁~76頁