大阪支部  弁護士  浅田 有貴


【未破裂脳動脈瘤】

脳動脈の一部が限局性に拡張したもの。先天的な動脈壁の中膜欠損に,後天的な要因(高血圧,動脈硬化,喫煙,遺伝性の因子等)や血管内皮の修復障害が加わり形成されると考えられている。

脳動脈瘤が破裂せずに成長すると,神経を圧迫して複視や視野障害をきたすことがあるが,多くは自覚症状を伴わない無症候性である。一方,破裂するとクモ膜下出血や脳梗塞を生じることがある。脳動脈瘤の破裂はクモ膜下出血の原因としてもっとも数が多いとされている。




【脳動脈瘤好発年齢】

 40歳~60歳




【脳動脈瘤好発部位】

 血管の分岐部。特に,前交通動脈(Acom),内頸動脈・後交通動脈(IC-PC)分岐部,中大脳動脈(MCA)分岐部に多い。




【コイル塞栓術】

 瘤内で血液が乱流を生じて瘤が拡大することを防ぐ手術の一つ。瘤の中に柔らかい金属(プラチナ)のコイルを詰め込む方法による。これにより血流が瘤内に流入しなくなり,瘤が拡大しなくなる。

 鼠頸部の動脈から患部まで,マイクロカテーテルと金属を導入して行う。開頭手術よりも患者の身体に対する侵襲の度合いは低い。そのため,侵襲度のより高い開頭動脈瘤頸部クリッピング術の施行が難しい重症患者や高齢者でも,施行が可能であることが多い。




【コイル塞栓術の適応】

未破裂脳動脈瘤の治療適応の基準や手術の実施時期について,明確な基準は確立していないが,以下の場合にはコイル塞栓術の施行が検討されて良い。

・動脈瘤が大きすぎない(動脈瘤の径(Dome)が1024mmのものを「大型」動脈瘤,25mm以上のものを「巨大」動脈瘤とする。)場合

・動脈瘤が血栓化していない場合

・脳動脈瘤の頸部(neck)が狭い(Domeneckの比が2以上であるものを「狭い」とする。)場合




【裁判例】

名古屋地方裁判所 平成24年2月17日判決
 /手技上の注意義務違反・肯定


 医師らがデリバリーワイヤーとマイクロカテーテルの
X線不透過マーカーを十分に合わせなかったことから,デリバリーワイヤーがマイクロカテーテル先端部から進み出て,これにより動脈瘤壁を穿孔したため患者がクモ膜下出血を発症したという事実が認定された。

 注意義務違反の内容は,執刀医らのマーカー合わせが不十分であったこと。





【参考文献】

・病気がみえる vol.7(第一版)/Medic Media

・よくわかる脳卒中のすべて/永井書店

・医療訴訟の実務(第一版)/商事法務
・脳ドックのガイドライン(改訂第三版・2008年)/日本脳ドック協会

                        以上