1.救急医療の性質

救急医療は、その性質として、患者に対して迅速かつ適切な検査や処置を行わなければ患者が死亡する、あるいは、患者に重大な後遺症が生じる危険性が高いケースがあることなどの性質があります。

 このため、救急医療行為を行う医師ら医業従事者は、迅速に患者のバイタルサインや身体所見をチェックしたうえで重症度など患者の様態を適切に把握し、患者の様態に応じた処置を行うことが求められます。

2.救急医療機関の分類

 日本の救急医療機関は、重症度別階層制度を前提として、第一次救急医療施設、第二次救急医療施設、第三次救急医療施設に階層化されています。
 それぞれの役割については、以下の通りです。

①第1次救急医療施設

 独歩にて来院するなど、比較的軽症の患者に対し、夜間・休日の外来診療を行う医療施設です。

②第2次救急医療施設

 救急搬送されてくる患者や、第一次救急医療施設から転送されてくる患者など入院治療が必要と考えられる比較的重症な患者を受け入れる医療施設です。

③第3次救急医療施設

 第2次救急医療施設では対応することができない重篤な様態の救急患者に対する診療を担当する医療施設です。

3.救急医療における医療水準

(1)医療水準とは

 医療水準とは、医師が診療や治療行為を行う際に求められる注意義務の水準を指し、最高裁は「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」により決定されるとしています。

 そして、個別具体的な場面において医療機関に求められる医療水準は、当該医療機関の性格や所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮したうえで具体的に決定するものと考えられています。

(2)救急医療における医療水準

 参考となる裁判例として、京都地判昭和52年8月5日判時892号91頁があります。

 同裁判例は、当該医療機関が救急医療施設である以上は患者に対してふさわしい診療体制をとって診療を行い、当該病院において手に負える患者であるかどうかを見きわめたうえで、もし当該病院で手に負えない患者だと判断したら即刻然るべき医師を招くなりその処理の病院へ送って適切な処置を仰ぐべきである旨を判示しています。

 この裁判例を前提とすれば、当該救急医療機関に要請される医療水準は、重症度別階層制度などによる当該医療施設の性質、設備環境や人員の配置状況等を前提としたうえで、個別具体的に決定されるべきであると考えることができます。

 ただし、救急医療施設(救急告示医療施設)は設置条件として「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師」が常時診療に従事していることが条件であり、医師は「救急蘇生法、呼吸循環管理、意識障害の鑑別、緊急手術要否の判断、緊急検査データの評価、救急医薬品の使用等について相当の知識及び経験を有する」医師であることが必要とされていますので、仮に担当医師の専門外の診療科目における救急診療行為であっても、当該救急医療施設で必要とされる診療範囲では、直ちに医師の注意義務の程度が軽減するとはいえません。

弁護士 藤田 大輔