1 意義

 解剖とは、生物の体の一部(局所解剖)または全体(全身解剖)を切開し、臓器や組織の形態、構造、相互の位置関係などを調べ、病因や死因などを検索することをいう。
 病院で死亡したが死因に疑問があるという場合、死因解明には解剖が有益である。

2 解剖の種類

 死体解剖は、系統解剖(正常解剖)、病理解剖、法医解剖(司法解剖及び行政解剖)に大別され、以下の図のような種類がある。

3 司法解剖

 医療関連死の原因として医師の責任が強く疑われる場合には、警察に相談し、被害届や告訴状を提出するなどして司法解剖をしてもらうべきである。ただし、司法解剖は裁判官の令状に基づいて行うものなので、遺族の意思だけで行うことができるわけではない。

 司法解剖が行われた場合、解剖結果は「訴訟に関する書類」(刑訴法47条)に該当するので、「公判の開廷前には、これを公にしてはならない」(同条)との条項により、公判の開廷前には開示することはできないが、2000年2月4日の法務省刑事局長通知により、不起訴処分が確定した後は、遺族に解剖結果が開示されるようになった。

 もっとも、不起訴処分になるか公判請求されるか確定しない期間の開示はなお困難という問題が残っている。

4 病理解剖

 このため、医療過誤事件に関連して行われる解剖の多くは病理解剖であり、臨床医の依頼に基づき、死亡した患者の遺族の承諾があれば行うことができる。

 日本では年間約2万件の病理解剖が実施されており、結果は1年毎に日本病理学会により日本病理剖検輯報に全例が収載され刊行されている(http://pathology.or.jp/kankoubutu/JSP-hyou.html参照)。
 病理解剖の結果は、解剖をした医師が通常報告書の形で遺族に交付し、説明する。

5 病理解剖をすすめられたときの遺族の対応方法

 大切な家族を亡くしたばかりの人は、死んだ後に身体を傷つけるのはかわいそうであるとの想いから解剖を承諾しないケースが多いようである。これは遺族の気持ちとして、至極当然のものであろう。

 しかし、医療事故で亡くなって、時間が経過してしまった後、死因に不審を感じて弁護士に相談しても死因を特定することができないケースがある。そのようなケースは、死因が特定できない以上、診療行為のどの段階でどのようなミスがあったのかを、事後的に探るのはとても困難である。

 そこで、死因がはっきりしないとか、医師の説明に反して急激に悪化して死に至ったなど、事前に聞いていた病状説明と違った結果をたどった場合には、解剖を検討するべきである。ただし、その場合でも、医療事故があった可能性のある病院ではなく、例えば不審死として警察に届け出て司法解剖をお願いするか、あるいは、別の病院での病理解剖を希望していることを医療過誤があった可能性のある病院側に伝えることも1つの考えである。

 どちらにしても、医療過誤が疑われる場合、その証拠が散逸してしまう前に、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめする。

弁護士 藤田 大輔