1 意義

 カンファレンス方式による鑑定(以下、「カンファレンス鑑定」という。)とは、原則として3名の鑑定人が、事前に鑑定事項に対する意見を簡潔な書面にまとめて提出した上で、口頭弁論期日において、口頭で鑑定意見を陳述し、鑑定人質問に答えるという複数鑑定の方式である。

 東京地方裁判所においては、現在、原則としてカンファレンス方式によって鑑定を行っている。

2 カンファレンス鑑定の流れ

(1)鑑定事項の決定

 通常の書面鑑定の場合と同様に争点に即して具体的かつ明確な鑑定事項であることを要する。もっとも、口頭鑑定という性質からしても、複雑かつ抽象的な鑑定事項は避け、より整理された簡潔かつ具体的な鑑定事項とすることが要求される。

(2)鑑定人の選任

 裁判所が、原則として3名の医師を鑑定人として選任する。

(3)鑑定人による意見書の作成

 裁判所は、各鑑定人にあらかじめ鑑定資料を交付し、各鑑定人は、それに基づき、鑑定事項に対する結論とその理由を簡潔に記載した意見書をあらかじめ裁判所に提出し、裁判所から各当事者に送付する扱いがされている。

 この書面は、鑑定を実施する口頭弁論期日に先立ち、各鑑定人の意見を知ることにより、裁判所及び当事者が十分に準備を尽くし、鑑定当日における適切な対応を可能にするものであり、鑑定人の調書末尾に添付されて鑑定の一部をなすものである。

(4)カンファレンス鑑定当日

 当日は、民訴法215条の2所定の鑑定人質問の手続に従い、裁判所から各鑑定人に対して鑑定事項ごとに意見書の趣旨を明確にし、疑問点を質すため詳細な質問をし、その後、鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序で、補充的な質問をする。各鑑定人の意見が異なる場合等、鑑定人の意見の内容によっては、鑑定人間で議論してもらうこともある。

(5)カンファレンス鑑定実施後

 上記のような鑑定人による意見陳述及び鑑定人質問の内容は、証人尋問の場合と同じく、録音反訳方式により調書を作成することで記録化し、上記のとおり意見書を末尾に添付する。

3 カンファレンス鑑定のメリット

(1)的確性

 あらかじめ提出された鑑定内容の要旨を簡潔に記載した書面に基づき、裁判所及び当事者からの質問が行われることから、鑑定を求めた趣旨に的確に応えた鑑定意見が得られることになる。

(2)信頼性

 複数の鑑定人が同席して口頭で意見を陳述し、必要に応じて鑑定人間での議論を行うことにより、各鑑定人の意見の内容や、鑑定人間での意見の異同及びその理由が鮮明になり、鑑定結果の信頼性が確保される。

(3)公平性

 公開の法廷で行われることにより、手続の透明性が図られ、また複数の専門医による鑑定結果の形成過程が明らかになることで、鑑定結果の公平性や客観性が確保される。

(4)負担の軽減

 複数の鑑定人による鑑定であることから、鑑定人の精神的負担が軽減される。また、口頭により鑑定意見が陳述され、事前に提出する書面も簡潔なものに留まることから、詳細な意見書を作成することによる鑑定人の時間的負担が軽減される。

4 カンファレンス鑑定の問題点と対処法

 カンファレンス鑑定は、事前に提出する書面は意見の「要旨」でよい、鑑定当日は口頭での意見陳述で足りる、とされているため、合理的な科学的根拠に裏付けられていない「医療現場における感想・感覚」が鑑定意見として示されてしまう危険性を常に持っているため、鑑定結果を導く根拠が、鑑定人の個人的体験に基づく感想・感覚なのか、医療界で認識されている専門的知見なのか、といった視点で、その「科学性」が厳しく吟味されなければならない。

 この問題点に対処するために、カンファレンス鑑定当日に「科学性」を吟味するための質問を事前に準備しておくべきである。具体的には、「先ほどの~という回答の根拠は何でしょうか」「~という医学文献では、~と指摘されていますが、鑑定人のご意見とは異なるのでしょうか」等と掘り下げた質問を準備しておくとよいと考えられる。

弁護士 藤田 大輔